<大ヒット盤> 竹島宏『恋町カウンター』 歌詞と歌唱とが抜群の相性

竹島宏『恋町カウンター』

 通算21作目のシングル。デビュー15周年記念の前作『月枕』では売上を大幅に伸ばしたが、本作では歌唱面でもスター性が急伸している。

 表題曲は、優男キャラを活かした軽快なポップスで新境地だ。「恋町」と「恋待ち」を掛け、出逢った二人が徐々に近づくという松井五郎の詞も上手いし、思わず手拍子をしたくなるほどリズミカルな作曲・編曲は都志見隆が手がける。竹島がさりげなくもドラマティックに歌うので、“ザ・ベストテン”時代のヒット曲かと思うほどだ。

 Aタイプのカップリング『ほっといて』は、叶わぬ恋に溺れるミディアム調の歌謡曲。Bタイプ収録の『嘘つきなネコ』は、寂しがりで強がりの“ネコ”が主人公。興味深いのは、竹島がソフトに歌うことで、2曲の登場人物が女性にも男性にも見えてくることだ。だからこそ、“誰もが愛を求めている”という人間の本質を突かれている気がするし、この松井五郎の歌詞世界と竹島宏の歌唱との抜群の相性を再認識した。

 本作を聴けば、自分の弱い部分を分かってくれる誰かと交流したくなるはず。

(テイチク・Aタイプ 1204円+税)=臼井孝

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