ラトバラ「全チームが速いだろうが、表彰台争いを期待」/WRC第4戦ツール・ド・コルス 事前コメント

 4月5~8日に行われる2018年のWRC世界ラリー選手権第4戦ツール・ド・コルス。この大会に向けて、参戦するドライバーたちが意気込みを明かした。

 第4戦の舞台となるのは地中海西部に位置するフランス領コルシカ島。フランスの首都パリからは飛行機で約90分の場所にあり、ナポレオンの出身地としても知られる観光名所だ。WRCでは1973年から2008年までフランス大会の開催地を務めてきた。

“1万のコーナーを持つラリー”として知られるツール・ド・コルス
ツール・ド・コルスでは岩壁をかすめるように走るセクションも

 このコルシカ島での1戦は“1万のコーナーを持つラリー”とも呼ばれ、その名のとおり、コーナーが次々と現れる山岳路でSSが行われる。道幅も狭く、片側は岩壁、反対側は断崖絶壁といったステージも多く、ドライビングスキルだけでなく、精神的なタフさも求められる。

 週末に行われるSSは全部で12本と少ないものの、走行距離の長いステージが多く、合計距離は333.48kmに及ぶ。また、SS1とSS3は49.03km、SS11は55.17kmで争われるロングステージとななっていることも特徴のひとつだ。

 そして、この大会は週末を通してすべてターマック(舗装路)で行われる今季初のイベントでもある。1月の第1戦モンテカルロもターマックイベントではあるが、雪や氷も入り交じる特殊な1戦だった。

 路面コンディションは舗装がスムーズな箇所もある一方で、ヤスリのように荒れた舗装も入り混じっていることから、タイヤマネジメントも勝敗を分ける要素となる。

 最上位クラスに参戦する4チームは、シトロエンを除いて3チームが3台体制でエントリー。シトロエンは前戦ラリー・メキシコと同様、クリス・ミークとセバスチャン・ローーブを起用する。

 Mスポーツはセバスチャン・オジエとエルフィン・エバンス、ブライアン・ブフィエの3台体制。このうちエバンスはコドライバーを変更して臨む。

 これはラリー・メキシコでエバンスがクラッシュした際、コドライバーのダニエル・バリットが軽い脳しんとうを起こしたことが要因。医師がバリットの回復を優先するよう進言したため、バリットは第5戦アルゼンチンまで休養を取ることになった。

 そのバリットに代わってエバンスのコドライバーを務めるのは、2003年にペター・ソルベルグとともにWRCチャンピオンに輝いたフィル・ミルズ。これまで13度の勝利を収めている大ベテランだ。

 そのほかの陣営に大きな体制変更はなし。ヒュンダイはティエリー・ヌービルとアンドレアス・ミケルセン、ダニ・ソルドの3台体制、トヨタもヤリ-マティ・ラトバラ、オット・タナク、エサペッカ・ラッピの3台体制だ。

 下位クラスにあたるWRC2クラスには、トヨタの若手育成プログラムに参加している新井大輝と勝田貴元もエントリー。トミ・マキネン・レーシングのフォード・フィエスタR5をドライブする。勝田は第2戦スウェーデンでクラス優勝を飾っており、2戦連続で勝利を手にできるか期待がかかる。

 新井も直近で参戦したイタリア国内ラリーで総合6位に食い込むなど速さを発揮しているだけに、クラス制覇の可能性は充分だ。

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■Mスポーツ・フォード

●セバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)

「ポジティブな形でシーズンスタートを切れた。3戦中2戦で勝利できたからね。自分たちの成長具合には満足しているし、ターマック(舗装路)でも、この流れを維持したい」

「(第1戦)モンテカルロもターマックイベントではあるが、あれは(アイスコンディションとの)ミックスイベントだ。だから、ツール・ド・コルスが今年初のターマックイベントとなる。この場所に戻ってくるのを楽しみにしていたよ」

ここまで3戦中2勝と好調を維持しているセバスチャン・オジエ(フォード・フィエスタWRC)

「今回も激しいバトルになると思っているけど、先週のテストでしっかりとした手応えを掴むことができた。フィーリングもよかったし、いい成績を成し遂げるために最適なセットアップをみつけられた」

「それにフランス人ドライバーとして、このツール・ド・コルスではいい結果を残したいというモチベーションも生まれるんだ。イベントは1万のコーナーを持つラリーと呼ばれていて、その名がすべてを物語っている。まるでラリーのために生まれたような島なんだ」

「今年はルートの大半が刷新されるけど、集中力と正確さが求められるという点は変わらない。いつも訪れるのが楽しみな島なんだ。フランスの地で好成績を残したいと思っているよ」

●エルフィン・エバンス(フォード・フィエスタWRC)

「ツール・ド・コルスは本当に楽しみなイベントだから、最大限に楽しむつもりだ。僕たちは速さがあるけど、いい形でシーズンのスタートを切れなかったから、コルシカ島では必ず軌道修正したい」

「(コドライバーの)ダン(ダニエル・バリット)が不在だから、タフな戦いになるだろうけど、なにより彼の健康が第一だし、シーズン残りを戦うためにも回復に時間を割くべきなんだ」

「フィル(ミルズ)が代役を務めてくれるから、プッシュできることを願っている。フィルは自分の仕事を完璧に理解しているし、ダンの次に僕のペースノートについて熟知している。ラリーの勝ち方も知っているしね」

「今年のルート構成では、新しいセクションが多く存在するけど、テクニカルなセクションも健在だ。だから、僕はこのイベントが好きなんだよ。驚くほどスムーズなセクションもあれば、ツイスティでヤスリのような路面のセクションもあって、本当にバリエーション豊かなんだ」

「どんな結果になるか想像がつかないけど、できる限りベストを尽くすしかない。ここでは過去に好成績を残してきたから、今年も楽しみにしているよ」

●ブライアン・ブフィエ(フォード・フィエスタWRC)

「ツール・ド・コルスはずっと僕のお気に入りのイベントの1つだよ。道も素晴らしいし、島も、ここに住んでいる人たちも素晴らしいよ。最高のイベントだから毎年楽しみにしているんだ」

「事前テストではいいマシンバランスをみつけられた。チームと一緒に取り組んでセットアップの最適解をみつけたんだ。週末はSSでハードワークの成果を披露したい」

「コルシカ島ではロングステージで一貫性を発揮すること、ミスを避けることがチャレンジングな要素になる。それが僕たちの目標であり、この素晴らしいマシンをドライブできる機会がもっと増えるよう、いいタイムを出したいね」

■ヒュンダイ・モータースポーツ

●アンドレアス・ミケルセン(ヒュンダイi20クーペWRC)

「ツール・ド・コルスは本当に特別なイベントだし、シーズン最初の真のターマックラリーと言える。クルーとして、ステージの最中に気を休められる時はまったくない。コーナーからコーナーへチャレンジが続き、最大の集中力が必要とされるんだ」

「マシンの中はいつものように、ドライバーとコドライバーにとって等しく厳しいものだよ。ブレーキが加熱しやすいから、そうならないようにドライビングスタイルを適応させないとならない。ステージは長いからね。ツール・ド・コルスは美しいラリーで、とても楽しめるよ」

●ティエリー・ヌービル(ヒュンダイi20クーペWRC)

「ツール・ド・コルスは個人的にシーズンのハイライトのひとつだ。このラリーではここ数年でいくつか良い思い出がある。昨年のWRCでの勝利も含めて2度優勝してきたから、この週末も競争力を発揮したいと望んでいる」

2017年のツール・ド・コルスはティエリー・ヌービルが制覇

「プレイベントテストの終わり頃にアクシデントがあったけど、その影響でこのラリーへのアプローチが変わることはない。速いドライバーがたくさんいるから、また接戦になることは分かっている」

「長距離のステージはコルシカならではの特徴だけど、それは集中を切らしてはいけないということだ。クルーにとってもチームにとっても非常に厳しいイベントだ。でもドライバーズとコンストラクターズ、両方のチャンピオンシップで僕たちの順位を上げると心に決めているよ」

●ダニ・ソルド(ヒュンダイi20クーペWRC)

「メキシコでの結果には満足しているし、ツール・ド・コルスのターマックでの挑戦に向けて、このレベルのパフォーマンスを続けられることを期待している。このラリーをいつも楽しんでいるけど、かなり特有なアプローチを取らなければならない」

「山中での長距離ステージがあるコルシカは、第1級のターマックイベントだよ。コーナーに次ぐコーナーで、ステージの間中、つねにステアリングを操作している。とても体力を消耗するイベントだ。いいパフォーマンスのためには、正確なペースノートがとても重要だ。スタートが待ちきれないよ!」

■シトロエン・レーシング

●クリス・ミーク(シトロエンC3 WRC)

「ツール・ド・コルスは多くの難関がある非常に厳しい挑戦だ。でも僕はいつもここでのラリーを楽しんできた。昨年はかなりの競争力を発揮することができた。シーズン開幕以来誰もが進歩を見せてきているけれど、先頭集団に加われるように願っている」

WRC第3戦メキシコに参戦したセバスチャン・ローブ(左)とクリス・ミーク(右)

「さまざまなタイプの道路で行なったプレイベントテストでは、多くの成果があったよ。荒れてバンピーなセクションでも、さらに改善できたという感触を掴んでいる。とにかくテストセッションの出来には満足しているし、スタートするのが待ちきれないよ!」

●セバスチャン・ローブ(シトロエンC3 WRC)

「最近グラベルでC3 WRCをドライブしたから、路面の状態は違っても、コルシカでのテストでは自分のやるべきことをすぐに把握できた。僕はクリス(・ミーク)の基本セットアップで(事前テストを)始めた。その後、彼のセッティングにとても似ているけれど、自分に合ったものにすぐ落ち着くことができた」

「テスト終盤での感触はとても良かったよ。他の全員と比べて自分たちがどこに立っているのかを知るには、様子をみなければならない。メキシコでのパフォーマンスの後だけど、またペースを掴めるよう願っている。特にコルシカではいつもターマックで調子がいいからね」

「とにかく、簡単なラリーでは決してないにしても、この場所とイベントを僕はいつも楽しんできた。最後に参戦したときよりも、コースはスピードが出るようだ。狭くてテクニカルでバンピーなステージが多くあるにもかかわらずね。でも僕にとってはすべてが新しいコースになるし、ルート全体のペースノートを作るのは簡単にはいかないだろう」

■トヨタ

●ヤリ-マティ・ラトバラ(トヨタ・ヤリスWRC)

「2015年に優勝して以降コルシカには良い思い出がいくつもあるし、本当にお気に入りのアスファルトラリーなんだ。このラリーは“1万コーナーのラリー”と呼ばれていて、もし走っている途中に100メートル以上の直線があったら、それはコルシカ島ではなく違う島に来てしまったという話があるくらいなんだ」

「コーナーではイン側にそれほど深く切り込めないから、イン側の砂利が道に散乱することはあまりなく、コーナーとライン取りに集中して走ることができる。事前のプレイベントテストはとてもポジティブな内容で、非常に良いフィーリングが得られクルマにはとても満足しているよ」

「コルシカでは恐らく全チームが速いとは思うけど、表彰台争いができることを期待している」

●オット・タナク(トヨタ・ヤリスWRC)

「今シーズンはここまで、すべての路面で充分な競争力があった。また、チームは信頼性を高めるため一生懸命努力をしてきた。だから、そろそろライバルからポイントを取り戻さなくてはならないね」

「去年のコルシカではフィーリングがとても良かったから、今回は良い結果を狙っている。ラリー・モンテカルロは同じターマックとはいえ、コンディションはかなり特殊だったから、コルシカとあまり比較できないけど、そこで得たいくつかの発見をコルシカの事前テストで試すことができた」

「2日間のテストではとても良いフィーリングだったから、クルマは正しい方向に向かっていると思うよ」

●エサペッカ・ラッピ(トヨタ・ヤリスWRC)

「コルシカには過去に異なるカテゴリーのクルマで何度か出場した経験があるけど、他とはまったく違うラリーだと思う。コーナーが次々と迫り、ストレートで休むような時間はまったくないんだ」

「また、スケジュールもユニークで、SSの数は多くないけど、それぞれが非常に長いのが特徴だ。今回は初めてWRカーでコルシカに出場するけど、モンテカルロではスピードを示すことができたので自信はあるよ」

「今回は、事前のテストで良いセットアップを見つけ、さらに自信を深めることができている。湿った路面と完全なドライの路面の両方でテストをすることができたから、天候がどうなろうと準備は整っているよ」

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