ウェザーニューズ、チーム向け『モータースポーツ気象サービス』を開始

 あらゆる気象情報を提供する株式会社ウェザーニューズは4月4日、モータースポーツで活躍するレーシングチームを気象面でサポートする『モータースポーツ気象サービス』の提供を開始すると発表した。

 ほぼすべて屋外のサーキットで行われるモータースポーツの世界では、天候を読み、それに応じたタイヤ選択やセットアップ、レース戦術を採ることは勝敗を大きく左右する。観戦するファンにとっては、天候によってドラマチックなレースが演出され楽しめるが、戦う側にとってはわずかな気候の変化も情報として欲しいのが実情だ。

 特に日本において重要なのは、タイヤコンペティションがあるスーパーGT。チームとメーカーは、タイヤテストや公式テストで得られた情報と、レースウイークの気温・路面温度の予測をもとに限られたタイヤ持ち込み本数の内訳を決めなければならない。

 しかし近年はタイヤ開発競争が激化しており、予測された気温・路面温度とわずかでも合わないと、思うように作動しないほど繊細なタイヤが用いられている。この過程を経てレースウイークに持ち込まれたタイヤが、実際の気温・路面温度と合わず「外した」と嘆くチームは散見される。その場合、グリップの低下や急激な消耗などに見舞われ、大きく順位を落とすことになる。

 もともと海洋観測の気象情報提供からスタートしたウェザーニューズは、2010年からニスモと契約しており、スーパーGTでは8年間ニッサン系チームがサポートを受けてきた。この活動を通じて、必要な観測データやノウハウを蓄積し、モータースポーツに特化した気象サービスを確立している。

 ウェザーニューズ社のモータースポーツサポート体制は、気象衛星や低層の雲も観測できるレーダー、センサーを配置し、その地域におけるきめ細かなデータを提供している。今回のサービスでは、タイヤ発注の6か月前にはサーキットの天気傾向や過去の統計データを提供。また、レースの2週間〜1カ月前に持ち込みタイヤを選択するタイミングで、レース時間帯の天気や路面温度、路面状態、予測のぶれ幅を加味した複数の予測シナリオなどを伝える。

 さらに、レースの3日前には1時間ごとの路面温度を0.1度単位で予測したきめ細かい予報を提供し、当日は1分間隔の気温や路面温度などの観測データを伝えることで、レースの半年前から当日まで、ベストなタイヤ選択やレース戦略の策定を支援。予測のぶれ幅を加味した複数のシナリオを伝えることで、チームやエンジニアは複数のシミュレーションを立てることが可能になり、「どんな気象状況でもチャンスに変えることができます」としている。

 路面温度については、『熱収支基本式』という数式に基づき導かれるが、ウェザーニューズでは全国の約8割の高速道路の道路管理を支援している道路気象チームのノウハウを反映。また、独自のレーザー機器を用いて観測なども行っている。

「スーパーGTでは、時に車両の性能以上にタイヤの性能が勝敗を大きく左右することがあります。そのため、レースに向けてタイヤをどう選択するかはとても重要なことになります。選択に際しては、レース時の天候、気温、路面温度など様々な気象情報をもとに決定しますが、雨の場合は雨量の変化や温度、晴れの場合でもわずかな気温の変化や細やかな日射量の変化予測など多くのそして詳細な情報がタイムリーになければなりません」と語るのは、ニスモ鈴木豊監督。

「ウェザーニューズはこうした我々のニーズに的確に応えてくれる心強いパートナーであり、そして欠かすことのできないチームのメンバーです。これからも新たな目標に向かって一緒にチャレンジしていきたいと思っております」

 8年間ウェザーニューズとニスモが培い、確立されたモータースポーツに特化した気象サービスは、今後日本のみならず、世界中のさまざまなレーシングチームを支援していくことになる。気象の情報を得ることは、今後モータースポーツにおいての勝利のための必要要素となっていきそうだ。

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