衝撃デビュー2連発の中日ドラ1鈴木博 竜の悲しき歴史に終止符打てるか?

中日・鈴木博志【写真:荒川祐史】

プロ初登板で最速155キロ、3日の巨人戦は3連続奪三振

 開幕を迎えた球界に衝撃を与えた。それも、1度ならず、2度までも、だ。

 中日のドラフト1位ルーキー鈴木博志投手。今季、プロとしての第1歩を踏み出したばかりの21歳が、圧巻の投球を見せている。4月1日の広島戦(マツダ)。ビハインドの場面で登場してプロデビューを飾ると、最速155キロをマークして周囲の度肝を抜き、2つの三振を奪って3者凡退に打ち取った。

 4月4日の巨人戦(ナゴヤD)では3点リードの8回にマウンドに上がり、本拠地デビュー。この日は最速153キロの真っ直ぐを軸に、中井大介、吉川尚輝、坂本勇人の巨人の上位打線を3者連続三振に斬った。5日の同戦でも吉川尚、坂本、ゲレーロの巨人の中心打者を3連続内野ゴロに斬った。開幕6試合を消化して3試合に登板、まだ1人の走者も許していない。

 まだ開幕を迎えたばかり。各球団との対戦も一巡しておらず、何かを語るには時期尚早ではあるが、それでも、鈴木博の投じるボールは力強い。このまま怪我なくシーズンを投げ抜ければ、気が早いが、今季の新人王の有力な候補になってくるはずだ。

 中日の新人王といえば、昨季、ドラフト2位の京田陽太内野手がそれに輝いたが、中日ファンにとっては苦い思いが積み重なってきた賞でもある。京田より前となると、1998年の川上憲伸投手まで遡る。そこからの間にも、候補となる選手はいながらも、投票に敗れて逃してきた。特に、ここ数年、そして投手(その中でもリリーフ)において受賞を逃すことが続き、ファンにとっては悔しい結果になってきた。

2012年の田島、2014年の又吉&福谷は抜群の成績

 2012年の田島慎二以降、中日で新人王候補になった投手の成績と、その年の新人王の成績を見てみよう。各選手の票数はその年の新人王投票での獲得票数だ。

○2012
田島慎二(1年目)40票
56試合5勝3敗0セーブ30ホールド 防御率1.15

新人王:野村祐輔(広島、1年目)200票
27試合9勝11敗0セーブ0ホールド 防御率1.98 

○2013
岡田俊哉(4年目)0票
66試合7勝5敗2セーブ15ホールド 防御率2.79

新人王:小川泰弘(ヤクルト、1年目)252票
26試合16勝4敗0セーブ0ホールド 防御率2.93
 
○2014
又吉克樹(1年目)25票
67試合9勝1敗2セーブ24ホールド 防御率2.21

福谷浩司(2年目)16票
72試合2勝4敗11セーブ32ホールド 防御率1.81
 
新人王:大瀬良大地(広島、1年目)217票
26試合10勝8敗0セーブ0ホールド 防御率4.05

○2015
若松駿太(2年目)20票
23試合10勝4敗0セーブ0ホールド 防御率2.12

新人王:山崎康晃(DeNA、1年目)241票
58試合2勝4敗37セーブ7ホールド 防御率1.92

 特に2012年の田島慎二、2014年の又吉克樹、福谷浩司の成績は新人王の選手と比べても遜色ないものであったと言えるだろう。田島は驚異の防御率1.15をマーク。又吉は67試合に投げて2桁まで目前の9勝を挙げ、防御率2.21、福谷は72試合に投げて2勝4敗11セーブ32ホールドだ。

 この年の最多セーブ投手の阪神・呉昇桓が2勝4敗39セーブ5ホールドの防御率1.76、同じく最優秀中継ぎ投手の阪神・福原忍が4勝6敗0セーブ38ホールドで防御率4.05。福谷の成績は、それぞれのタイトルホルダーに匹敵するか、それ以上とも言える成績を残していた。

 新人王はMVPなどと同様に記者投票で選出される。全国の新聞、通信、放送各社に所属し、5年以上のプロ野球担当経験のある記者が投票資格を持っている。投票という性質上、仕方のないことだが、どうしても個々人の主観が介入する。

 各球団の番記者からすれば、普段なかなか見ることのない他球団の選手も候補になってくる。そのため、シーズンを通しての露出や印象などが少なからず影響を及ぼす部分がある。昨季の新人王投票でも見られたように“人気投票”のような側面も見られてしまう。

 田島や又吉、福谷は露出が少なく、救援に失敗した場面がクローズアップされやすいセットアッパーの役割だった一方で、2015年の山崎康晃はリリーフの中で最も注目されるストッパーだった。その点の違いも大きい。昨季の京田は内野手。投手、特にセットアッパーは票が集まりにくい傾向にあると言える。

 鈴木博には、これをひっくり返すほどのポテンシャル、魅力があるといえる。アマ時代の最速は157キロ。1球1球、ファンがどよめくほどのボールは一見の価値がある。長く険しいシーズンはまだ始まったばかり。壁にぶち当たることもあるだろうが、なんとかそれを乗り越えてもらいたいもの。中日の歴代リリーバーが掴めなかった栄冠。竜の「ヒロシ」は、悔しい歴史に終止符を打てるだろうか。

(Full-Count編集部)

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