【三信産業の仮設機材レンタル戦略】「新機能機材」導入で差別化 職業訓練校の認定取得、人材育成に注力

 仮設レンタル業の三信産業(本社・大分県大分市、社長・大野真人氏)は、県内初の仮設機材リース・レンタル会社として1974年(昭49)に設立。北部九州地区の沿海プラント工事案件を中心に機材を供給している。近年は新機能機材の積極的保有で差別化、付加価値営業を推進。山口県にまで商圏を広げる。同社の仮設機材レンタル・リース戦略を紹介する。(後藤 隆博)

40歳で社長就任、業容拡大

 三信産業は創業以来、大分と福岡の沿海部にある臨海工業地帯のプラント工事関連が得意分野。40年以上にわたって、実績を積み上げてきた。

 大野社長は大学卒業後、大阪にある各種仮設機材・産業機械メーカーの光洋機械産業(KYC)で3年間修行して三信産業に入社。12年前、若干40歳のときに先代の嗣男会長から社長の座を譲られた。

 大野社長就任前の同社商圏は大分、福岡~山口県下関市辺りまでだったが、就任後に山口県下松市、宇部市、岩国市にそれぞれ営業所・機材センターを開設。同県南部の沿海地区まで拠点網を展開している。ここ数年は年1、2店舗の割合で新規出店してきた。現在は3県に計18営業所・機材センターを設けている。

 2016年2月には、新日鉄住金大分製鉄所の構内に拠点を設置。製鉄所は非常に厳しい安全基準があるため、外部の企業が構内に拠点を構えるのは難しいが、「安心の可視化」をキャッチフレーズに掲げる同社の機材保有・供給体制が評価された形といえる。

 機材管理の実績が評価され、09年には福岡機材センターと大分南機材センターが仮設工業会の仮設機材管理「モデル工場」の認定を取得している。

フィリピンで合弁設立、早期黒字化へ

 「今後拠点網・商圏を拡大する予定はない」とする大野社長。戦略は保有機材の〝持ち方〟にシフトしている。特に差別化の観点から、経年機材の入れ替えを行いつつ省エネ・省力などの新機能機材導入による付加価値営業に注力する。

 次世代足場の「Iq SYSTEM(Iqシステム)」は、支柱と水平材でフレームを構成するシステム足場。技術者の高齢化や足場職人の減少などの中、安全・機能・効率・経済面で建設会社や施工業者から高い評価を得ている。現在、三信産業が行う年間新規機材投資の3~4割を同製品が占めており、今後2~3年は同レベルの投資を続ける。

 吊り足場のクイックデッキやSKパネル、移動昇降式足場のリフトクライマーなども「顧客に喜んでもらえる機材」というコンセプトからの差別化商品。特にクイックデッキは、メーカーの日綜産業に次ぐ保有量を誇り、九州地区での橋梁案件などで実績がある。

 グループ会社はアルミ製仮設機材のレンタル・リースを行う九建リースとクサビ緊結式足場(ビケ足場)の工事業を手掛ける二豊ウイングの2社。このうち、九建リースは昨年12月、建設機械・機材などの販売・レンタル業の菅機械工業と業務提携し、東京・神田に営業所を、神奈川に機材ヤードを開設。今後、関東一円をターゲットにアルミ仮設機材のレンタル事業を展開する。

 16年12月には、光洋機械産業とともにフィリピン大手総合建設会社EEI社の子会社、イクイプメント・エンジニアズ社と合弁で現地に仮設レンタル・販売事業合弁会社「JPシステムズアジア(JP SYSTEMS ASIA)」を設立。三信産業にとっては初めての海外事業案件で、昨年4月から業務を開始しており、早期の黒字化を目指す。

信義、信用、信念の〝3つの信〟で発展

 大野社長が今後の課題の一つに挙げるのが人材の確保。毎年採用活動を行っているが「入社した人材がいかにスキルを高めて定着してくれるか」に力点を置いている。

 3年前には、地元大分にある立命館アジア太平洋大学(APU)卒のネパール人を1人採用。「語学堪能、非常に優秀な人材でフィリピンでの合弁立ち上げ時に大いに貢献してくれた」(大野社長)という。

 12年、三信産業は大分県から職業訓練認定校の認可を取得。仮設足場のレンタル・リース・工事に携わる社員教育の充実、また社外の若い人材育成のため「三信産業施工研修所」として運営している。

 顧客、仕入先と一体となった三位一体の付加価値提供を推進する三信産業。顧客、社会、社員にとって〝安心な会社〟を目指す。その根底にあるのは「信義・信用・信念を基に、すべての人々とともに喜びを分かち合い、ともに発展していく」という企業理念だ。

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