次世代IMSAプロトタイプはハイブリッド搭載か。DPi参戦メーカーは支持表明

 IMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップのDPi規定に参加または参加が見込まれるマニュファクチャラーは、プロトタイプカテゴリーの次世代レギュレーションにハイブリッド技術を取り入れることを支持すると表明しているが、ハイブリッドがLMP1に影響を及ぼしたように“パンドラの箱”にならないよう、開発に制限を設けるべきだと主張している。

 プロトタイプの次期レギュレーションについては2021/22年の策定に向けて、各シリーズ共通のプラットホームにするべく議論が続けられており、3月にはセブリングでFIA国際自動車連盟とACOフランス西部自動車クラブ、IMSAの関係者たちと会合を行っている。

 しかし、現行のDPi規定ではハイブリッドシステムが想定されておらず、議論がまとまらない要因のひとつになっている。

 FIAとACOは内燃機関とハイパワーのハイブリッドを組み合わせて最高1000馬力のマシンを作り上げるプランを提唱しているとみられる一方、IMSAに参画しているマニュファクチャラーは、かつてアウディがWEC世界耐久選手権で採用していた他社製フライホイール式ハイブリッドシステムのような“既成品”を使った、より小さなパワーユニットを望んでいるようだ。

 北米のホンダ・パフォーマンス・ディベロップメント(HPD)のスティーブ・エリクソン副社長兼COOは「コストを抑制できるような仕様のハイブリッドシステムならば、非常に興味深いものになると思う」と述べた。

「アキュラブランドの『RLX』や『MDX』、『NSX』などで採用している“スポーツ・ハイブリッドSH-AWD”をみれば分かるように、市販車の世界は(コンパクトなハイブリッドを搭載する)方向に向かっている。モータースポーツの世界にも同じような発想の者はいるはずだ」

「我々は自分たち自身を守らなくてはならないんだ。インディカーでは、ホモロゲーションによりエンジンのアップデートに制限を課している。これが有効的だったのだ」

「イノベーションを働かせる余地を残しながらコストも制限できる手法であり、完璧に機能している。インディカーのエンジンは7年に渡って使われ続けていることが、その証だ」

「また、BoP(性能調整)がないなかで接戦が繰り広げられている。エンジニアリング面でもいい形で競争が続いている。エキサイティングだし面白いよ」

 マツダ・モータースポーツのジョン・ドゥーナン代表も同様の考えを示し、かかるコストがすべてのカギであると指摘する。

「もしハイブリッドをやるとしたら、スタンダード化されたシステムが必要になる」とドゥーナン。

「自分たちでシステム開発を行うという“パンドラの箱”を開けた途端、かかる費用は莫大なものになってしまう」

「ここはスマートな決断が必要だ。レギュレーションをできるだけ長く安定させ、マーケティングに重点を置き、(そうしたやり方で)観客を増やす努力をするのだ」

マツダチーム・ヨーストのマツダRTF-P DPi

 こうした意見がある一方で、フォードの意見は異なるようだ。ワークスとして投入しているフォードGTの実績から、フォードはLMP1やDPi参入の可能性を探り続けている。

 新たにフォード・パフォーマンス・モータースポーツのグローバルディレクターに就任したマーク・ラッシュブルックは、コストを抑制するには既製品とカスタムメイドのコンポーネントが混在するようにしたいと述べ、そのことがさらには量産車ラインアップの開発推進にもつながるとしている。

 フォードは近年、2022年までに40車種の電気自動車ないしはハイブリッド車を販売する計画を発表している。

「バランスを見出すための議論の一部だった」と彼は語った。「制限がまったくなかったら、今日のLMP1に求められる予算枠が必要になるが、そこに進歩は生まれない」

「その一方ですべてを統一規格にするのも、やりすぎだ。最適なのは革新的な開発をしながらも、コストを合理的なレベルに抑えることができるバランスを見つけることだ」

■IMSAはハイブリッド・パワートレインに前向きの姿勢

 市販車が電気自動車へシフトしているなか、IMSA代表のスコット・アサートンは、特に今後のスケジュールを考慮した場合、最高峰クラスに向けた適切なテクノロジーが重要になることを認めている。

 IMSAのDPiプラットフォームは最近1年延長されており、2021年シーズン末までは現行レギュレーションが維持される予定だ。

「ある者にとって難しいのは4~5年先を見据えて、市場状況や優先事項はどうなっているか、世界的なテクノロジーの進化は何を可能にするかといったことを考えることだ」とアサートンは語った。

「ここに座ってルールやレギュレーションを作っていると、そうしたことを考える段階が来る。デトロイトモーターショーやロサンゼルスモーターショー、ジュネーブモーターショーへ足を運べば、ほとんどすべての展示ブースに電動化の波が来ているのを実感できる。我々はそうしたことも意識しているのだ」

 自動車業界を取り巻く状況を予測しようとすることは、関係者全員の共通基盤を見つけようと試みる上で、すでに複雑な状況を“さらに一層”複雑にすると、アサートンは語った。

「結局それはマニュファクチャラーと彼らが消費者に届ける製品に、関連性のあるものでなければならないと思う。直接的ではなくとも、つながりがあるべきだ」

「LMP1カテゴリーではすでにそうしたつながりが見られている。だが、DPiカテゴリーではまったくないのだ。DPiにすでに関与しているマニュファクチャラーと今後のことを考えて話をすると、全員ではないものの、その多くが次世代への進化は市販車とのつながりをもつべきだろうと考えている」

2017年から施行されたDPi規定にはキャデラック、アキュラ、マツダ、ニッサンの4メーカーが参画中

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