きょうから桜陶祭 手作りイベント 30年で春の風物詩に

 長崎県東彼波佐見町の陶郷・中尾山(中尾郷)で桜と窯元巡りを楽しむ「桜陶祭」が7、8の両日に開かれる。今年は30回目の節目。窯元の若手が手探りで始めた小さなイベントは、約1万5千人を集客する春の風物詩に成長。節目の年を記念し、中尾山の新しい郷土史をまとめた冊子も発行した。
 中尾郷一帯の21の窯元や商社が波佐見焼の器などを展示販売。このうち11の窯元では器に料理を盛り付けた人気商品「陶箱弁当」を提供する。各会場でスタンプを集めると景品が当たるウオークラリーもある。
 1989年に若手グループが地元のグラウンドで焼き物の実演やオークションを開いたのが始まり。「最初の来場者は40人くらいだったかな」。グループ代表だった「陶房青」の吉村聖吾社長(64)は振り返る。370年培った窯業の歴史と技術、豊かな自然、温かい人々…。まちの魅力をどう伝えるのか。知恵を出し合いながら現在のスタイルを確立した。
 「若いころは無我夢中だったけど、年を重ねると、この土地で焼き続けた先人への敬意と感謝の気持ちを持つようになった」と吉村さん。自治会や窯元連合は、中尾山の郷土史をまとめた冊子「波佐見 中尾山のあゆみ」を発刊した。地元の郷土史家、故馬場淳氏が50年近く前に編んだ郷土史をベースに編集。桜陶祭の項目も加筆され、「歴史」の一部となった。中尾山交流館で500円で販売する。
 現在、運営の中心を担う「光玉陶苑」の太田浩司社長(57)は天気予報を気にしつつ、大勢の焼き物ファンを迎える準備を進めている。「集落の高齢化など課題はあるが、この土地に移り住み、精力的に活動する若い世代もいる。今後は彼らの感性を生かし、新しい祭りの形を模索していけるといい」と話した。
 桜陶祭は両日とも午前9時~午後4時。やきもの公園や波佐見陶磁器工業協同組合会館などに駐車場(有料)があり、会館と会場をつなぐシャトルバスを運行する。

桜陶祭に向け並べられた波佐見焼=波佐見町中尾郷、「光玉陶苑」
桜陶祭の30年を記念し発行された「波佐見 中尾山のあゆみ」

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