驚異の奪三振率で1000奪三振達成 楽天エース則本が見せる投球の進化

楽天・則本昂大【写真:荒川祐史】

初奪三振は2013年3月29日ソフトバンクのラヘアから

 楽天の則本昂大は、4月6日のソフトバンク戦で内川聖一から空振り三振を奪い、1000奪三振を達成した。プロ野球史上147人目。珍しい記録ではないが、その中身はずば抜けている。

 則本は三重中京大から2012年ドラフト2位で楽天に入団。2013年、新人でいきなり開幕投手に指名される。この年は第3回WBCがあり、これに出場した楽天のエース田中将大の疲労を考えてのことではあった。
しかし、則本は春季キャンプで5試合(25回)に投げて3勝0敗、14安打22奪三振、自責点4で防御率1.44とチーム一の成績を挙げていた。この実績もあっての抜擢だった。

 2013年開幕戦だった3月29日ソフトバンク戦(福岡ヤフオクドーム)で、則本は2回裏にブライアン・ラヘアからプロ入り初の三振を奪う。則本は7回途中で降板し、自責点4で敗戦投手になるが、以後ローテーションに定着した。

 この年は田中将大が24勝0敗という空前の成績を残す一方、則本も15勝8敗、防御率3.34で新人王を獲得。チームの初優勝、日本一に大きく貢献した。

 ここから、わずか6シーズン目での1000奪三振。特筆すべきは、その奪三振率の高さだ。

 147人いる1000奪三振投手のK9(9イニングあたりの奪三振数)を見てみよう。10傑は下記の通りだ。※は現役。

1藤川球児11.61(812.2回1056奪三振)※
2野茂英雄10.28(1051.1回1204奪三振)
3則本昂大9.39(963回1005奪三振)※
4杉内俊哉9.27(2091.1回2156奪三振)※
5伊良部秀輝8.95(1286.1回1282奪三振)
6ダルビッシュ有8.84(1268.1回1250奪三振)※MLB
7石井一久8.83(2153.1回2115奪三振)
8松坂大輔8.66(1408.2回1362奪三振)※
9田中将大8.47(1315回1238奪三振)※MLB
10メッセンジャー8.43(1368.2回1287奪三振)※

防御率は徐々に上昇、過去3年は2点台

 則本は、イニング数より奪三振数が多い、4人しかいない投手の1人。近年、空振りが奪える変化球の進化によって投手の奪三振率は急上昇しているが、その中でも屈指の投手であることがわかる。

 2017年にはNPB記録を塗り替える8試合連続2桁奪三振をマーク。則本は「平成の奪三振王」と言ってもいい存在だ。

 則本のすごいところは、同時に投球の精度も上がっている点だ。入団以来5年連続で規定投球回数に達しているが、この間の防御率は3.34(7位)、3.02(4位)、2.91(3位)、2.91(4位)、2.57(2位)と毎年ジリジリと上昇している。今季はまだ2試合だが防御率は1.80。三振を奪うだけではなく、エースにふさわしい投球へと進化しているのだ。

 毎年のように奪三振数を競っていた大谷翔平は、今季日本ハムからMLBに移籍した。今、ライバルと目されるのは西武のエース菊池雄星、そして「おばけフォーク」の使い手、ソフトバンクの千賀滉大あたりだろう。

 則本にとって1000奪三振は単なる通過点に過ぎない。今後も華々しい奪三振ショーを見せてくれることだろう。

(「パ・リーグ インサイト」編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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