【工場ルポ】〈ワイヤロープ流通加工の大綱・本社工場(大阪)〉3階構造で役割分担、高効率加工が可能に 全自動化在庫管理や配送で優位性

 ワイヤロープ流通加工の最大手・大綱(本社・大阪市港区、社長・繁野光一氏)の本社機能の事務所棟は5階建で、本社工場である加工現場は本社事務所の1、3、4階に相当する。加工現場には本社事務所2階に相当する部分がなく、1階の天井が高い。同社製造拠点で最大規模の本社工場では、加工の品質面だけでなく、配送面なども効率性に富んでいる。同工場は作業員20人で、同社の売上の約60%を占める。ユーザーのニーズに合わせたワイヤロープ加工品を製造する3階構造の本社工場を訪れた。(綾部 翔悟)

全フロアをつなぐ自動ラック付き倉庫

 本社工場の1番の特徴は、最上階から1階まで全フロアをつなぐ全自動のワイヤロープ加工製品倉庫だ。業界でも非常に珍しい機能を持っており、加工製品は自動ラックで管理されている。同社はこの自動ラック付き倉庫を豊田自動織機に依頼して約20年前に導入。最上階などで加工したワイヤロープを1トン・2トン・3トンのマスで積み上げ、全自動倉庫に保管されている。そして、ユーザーからのオーダーに応じて本社1階の製品管理システムを通じて自動で送り出され、円滑に梱包・出荷される。

 同社は神鋼鋼線工業を筆頭にテザックワイヤロープ、浪速製綱、DSR(韓国)など多品種のワイヤロープを取り扱っている。同工場のワイヤロープ加工製品は約1450種類以上在庫されており、最大2500トンの在庫キャパを有する。即納体制が敷かれている同工場について、繁野社長は「品質面も重要だが、顧客満足度向上のために在庫保管やデリバリー面も一層の高みを目指す」と話す。

ニーズ対応へ体制整備、種類も豊富

 加工場の最上階は、径が1ミリメートルなど細物を中心としたワイヤロープ加工を行っている。切断機だけでなく、溶断機も配備しており、ユーザーの要望に応じて様々な加工体制が整っている。ワイヤロープだけでなく、遊具向けの繊維ロープも加工するなどロープの種類は豊富だ。加工した製品は、全自動ラックに収納され、出荷される。加工場では同社の関連会社であるダイコー興産やタルリットジャパンの社員も作業している。

 加工場2階は5台の切断機を配備し、中太のワイヤロープを加工している。同フロアでは、精密加工を重視した機材を配備しており、エレベーターや大型構造物向けなどのワイヤロープを加工している。

 さつま・ソケット加工などを担う加工場1階は、本社2階までの高さがあり、最大径50ミリメートルの太物加工を行っている。さつま加工やソケット加工などを行うだけでなく、300トン・600トン・1500トンのプレス機も配備している。大綱の機材は、ほとんど、同社が総代理店を務めるスウェーデンのタルリット社製。「タルリットは、スケールが大きいだけでなく、サービス面もきめ細やかだ」と魅力を語る。

高品質さらに追求

 大綱の主力製品は、超柔軟玉掛ワイヤロープの「ゴクナン」と、重量物据付用超高強度軽量玉掛ワイヤロープの「きわみ」。両製品は品質面や施工における安全性などの観点から今年1月、国土交通省が運営するNETIS(新情報技術提供システム)の登録商品となった。同工場では両製品を製造し、マリコンやゼネコン向けに出荷している。

 両製品を含めたワイヤロープ加工製品の引き合いは関東を中心に前年同期比以上で推移しており、本社工場の足元の稼働率は上々だ。

 本社工場は、3階構造でフロアごとに明確に役割が分けられており、在庫管理や配送面の優位性を生み出す自動ラック付き倉庫を配備することが強み。ワイヤロープ流通加工の最大手として、大綱は本社工場を含めて高品質・高効率な加工販売を目指す。

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