WEC公式テストはトヨタの1-2で終了。プライベーターとの差は4.3秒

 WEC世界耐久選手権のプレシーズンテスト“プロローグ”が4月6~7日、フランスのポール・リカールで行われ、TOYOTA GAZOO Racingの8号車トヨタTS050ハイブリッドが1分32秒662というタイムでテスト最速となった。

 30時間にわたる走行セッションが設けられた今季のWECプロローグ・テスト。ポルシェの撤退によりLMP1クラス唯一のメーカーワークスチームとなったトヨタと、プライベーターチームの新型LMP1マシンが初めて一堂に会する同テストにはLMP2、LM-GTEプロ/アマクラスを含む合計35台が参加している。

 車両規則によって空力面では昨年型から大きな変更が許されないトヨタTS050ハイブリッドと、このテスト直前に完成したレベリオンR13やオフの間に精力的にテストを重ねてきたBRエンジニアリングBR1などの新型マシンのタイム差に注目が集まるなか、トヨタは6日のセッション序盤から速さを見せ、マイク・コンウェイ駆るハイダウンフォース仕様の8号車トヨタが1分32秒662というタイムをマークする。

 このタイムは、2年前に同地で行われたテストのベストタイムから約4秒速く、コーナーの一部改修や路面の再舗装というコースの変更点を差し引いても驚異的なタイムといえる。また、今プロローグテストにおいては、プライベーター勢最上位の総合3番手タイムを記録したSMPレーシングの11号車BRエンジニアリングBR1・AERを4.372秒引き離すものだった。

 しかし、トヨタのテクニカルディレクターを務めるパスカル・バセロンはsportscar365.comに対して「冷却システムのテストの一環としてEoT(燃料流量等の制限)を逸脱した状態で走った」と説明している。

 バセロンによれば「プロローグでは冬の間にできなかった新しい冷却システムの性能を見極めるため、通常よりもパワートレインの出力を上げ、あえて高い負荷をかけていた」という。

 具体的にどのタイミングまでこのプログラムを行なっていたのは不明だが、8号車トヨタはテスト後半、1分38~41秒台でラップを重ねていることから、1分32秒662という全体ベストは制限値の範囲外で走行している間にマークされたものである可能性が高いとみられる。

バイコレス・レーシング・チームの4号車ENSO CLM P1/01・ニスモ
8号車トヨタTS050ハイブリッドはローダウンフォース仕様で走行した。
プロローグ恒例のマシン集合写真
CEFC TRSMレーシングの6号車ジネッタG60-LT-P1・メカクローム
今季からLM-GTEプロクラスに参戦するBMWチームMTEKは新車M8 GTEを投入

 WECから30時間の走行が許可された7号車トヨタは、3週間後の開幕戦でも用いるローダウンフォース仕様で合計839周をラップ。総合2番手となったパーソナルベストタイムは1分34秒655。プライベーター最上位とは1.993秒差だった。

 LMP1プライベーター勢では総合3番手となった11号車SMPレーシングと僚友の17号車SMP、アンドレ・ロッテラーらを擁するレベリオン・レーシングの1号車レベリオンR13・ギブソン、そして総合6番手につけたバイコレス・レーシング・チームの4号車ENSO CLM P1/01・ニスモまでが1分37秒台のタイムをマーク。

 総合7~9番手となったCEFC TRSMレーシングの2台のジネッタG60-LT-P1・メカクローム、ドラゴンスピードの10号車BRエンジニアリングBR1・ギブソンは1分38秒台でテストを終えている。

 LMP2クラスでは、元F1ウイナーのパストール・マルドナドを擁するドラゴンスピードの31号車オレカ07・ギブソンが1分40秒771でトップに。クラス2番手はシグナテック・アルピーヌのアルピーヌA470・ギブソン、同3番手にはロイック・デュバルが新加入したTDSレーシングの28号車オレカが入った。

 新型ならびに改良モデル3車種が加わったLM-GTEプロクラスは、ポルシェGTチームの91号車と92号車ポルシェ911 RSRがワン・ツー。1分51秒台をマークした2台のポルシェ勢の後方に67号車、66号車フォードGTを走らせるフォード・チップ・ガナッシ・チームUKが1分52秒台のタイムでクラス3、4番手につけた。

 フェラーリ488 GTEのエボリューションモデルを投入したAFコルセは、51号車フェラーリ488 GTE EVOがトップ4から1秒以上遅れてのクラス5番手。これにBMWチームMTEKの82号車BMW M8 GTE、アストンマーチン・レーシングの97号車アストンマーチン・バンテージAMRが続いている。

 昨シーズンからエントリー数がほぼ倍増することとなったLM-GTEアマクラスでは、ポルシェの育成ドライバーであるマッテオ・カイローリがドライブするデンプシー-プロトン・レーシングの88号車ポルシェ911 RSRがトップタイムを記録した。ベストタイムはLM-GTEプロクラスの5番手タイムに相当する1分52秒936だった。

 好調のポルシェ勢はGTEアマクラスでもトップ4を独占。クラス5~6番手にアストンマーチン勢が入り、澤圭太や石川資章らが駆るフェラーリ勢は2メーカの後塵を拝する結果となった。

 シリーズ初の2年に跨る2018/19年“スーパーシーズン”は5月3~5日、ベルギーのスパ・フランコルシャンで開幕する。

2年ぶりに2台体制となったデンプシー-プロトン・レーシングのポルシェ911 RSR
新型モデル、アストンマーチン・バンテージAMRを投入するアストンマーチン・レーシング
LM-GTEプロクラス、ワン・ツーとなったポルシェGTチームのポルシェ911 RSR

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