横浜・上永谷詠むカルタ 82歳が手作り

 「いと長き 谷間につづく 千枚田」「その昔 尼将軍も 馬休め」−。横浜市営地下鉄ブルーライン上永谷駅(同市港南区)を中心にした地域の歴史や懐かしい風景をモチーフにした手作りのかるたが、静かな人気を呼んでいる。手掛けたのは同区の田中茂さん(82)。かつて地域で見られた田植えの様子や小川で遊ぶ子どもの姿などが描写され、多くの人の郷愁を誘っている。

 「いろは歌留多(かるた) 永野むかし・昔」は、同区永野地区に残る言い伝えや農家の暮らし、美しい自然の様子を55枚のかるたに収めている。絵札のほのぼのとした水彩画、読み札の解説も全て田中さんによるものだ。

 かるた作りは、ドキュメンタリーカメラマンとして阪神大震災の被災地に赴いたことがきっかけになった。地域住民ががれきの中でたき火をすると、暖を取っていた人が「近所の人とは付き合いがないのに、本当にありがたい」とつぶやいた。その時、寄り添って生きることが大事だと気づいた」。仕事と並行しながら、地域の古老に子ども時代の思い出や、かつての地区の様子を聞き取り。歴史のある寺や神社にも取材し、古い資料も調べて完成させた。

 4年ほど前に300部制作し、小中学校や高齢者施設などに無料で配布。その後も評判を聞いて求める人が多く、今年に入って増刷した。田中さんは「かるたで遊びながら、自然の中で寄り添って生きてきた人の絆や、高齢の人たちが生きた時代を知ってほしい」と話す。

 かるたの問い合わせは、田中さん電話045(841)9828。

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