足柄茶の二番茶で紅茶缶飲料 付加価値で生産量減に歯止め

 県農協茶業センター(山北町川西)は1日から、足柄茶の茶葉を原料とする紅茶缶飲料「箱根山麓紅茶」を販売している。使用するのは、一番茶より販売価格が安い二番茶。「稼げない」と手を引く生産者が増える中、付加価値を生み出すことで茶農家の意欲向上につなげ、生産量の減少に歯止めをかけたい考えだ。

 同センターによると、製品は無香料・無糖・無着色で、県西部で生産された足柄茶の茶葉を100%使用。茶葉本来の香味が特徴で、苦味が少なくまろやかな口当たりに仕上げたという。

 足柄茶の生産量は年々減少している。農家から茶葉を買い取る同センターの集荷量は2009年は約192トンだったが、17年は約120トンほど。同センターは「急須を使ってお茶を飲む習慣が薄れて需要が減り、価格が下落したことや高齢化による後継者不足などが原因」とする。

 生産量の右肩下がりを食い止めようと、5年ほど前に、生産者や県などでつくる同センター茶業運営委員会で「付加価値の高い足柄茶の生産」をテーマに議論した。15年から紅茶の生産開発に取り組み、同年秋にティーバッグを発売、さらに消費量を伸ばそうと缶飲料を開発した。

 緑茶も紅茶も中国茶も、そもそも同じ「茶」の葉からできるが、それぞれで製法が違う。緑茶の場合は茶葉を摘み取ってすぐ蒸すが、紅茶は丸一日乾燥させるため、普段なら数時間ほどで終わる出荷までの作業に、最低でも1日半かかるという。

 緑茶のようにマニュアルや経験による蓄積がなく、南足柄市の農家、菊地敏春さん(55)は「全てが手探り」と苦労を語る。それでも「一番茶と同じ手間を掛けても、二番茶は5分の1くらいの値段になる。紅茶で付加価値が高まるのはありがたい」と歓迎し、「農家全体の生産意欲が上がったら」と期待する。

 価格は1本(490グラム)当たり税込み151円。同センター足柄茶直売所(同町川西)や県内のJA直売所で販売するほか、同センターのホームページから通信販売も受け付ける。問い合わせは、同センター電話0465(77)2001。

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