【全文その1】JFAの田嶋幸三会長、質疑応答の文字起こし。ハリルに告げた際の表情は

9日(月)に行われたヴァイッド・ハリルホジッチ監督に関する日本サッカー協会の記者会見。

日本サッカー界に大きな衝撃が走ったが、それと同時に田嶋幸三会長の発言についてしっくり来ないファンも多くいた。

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そこで今回は、この日の会見における質疑応答の全文を文字起こしする。かなりのボリュームになるため、三部に分けてお伝えしよう。

また、質問内容はできるだけ簡素化し、田嶋会長の発言についてはできる限り口語のまま記すこととする。

―ベルギー遠征が終わって西野氏は一時「現体制を続けていく」と明言した。それから10日あまりでこのような結論に至った経緯は?また、意思決定をしたのが会長かどうか

「まずメディアの皆さんに嘘をつくということではありませんが、私たちはこれがどの監督であったとしても、常に様々なことが起こることを想定して様々なことを考えた上で議論しています。

この契約解除に至るまでには、ワールドカップ予選を突破した後、その前、様々な状況で我々は議論をしてきました。

もちろん西野技術委員長とも議論し、スタッフとも議論し、岡田副会長とも議論をしながら、私たちはこのチームが最善の方向に行くためのサポートをしてきました。

そういう中でウクライナ戦、マリ戦。このベルギー遠征というのはワールドカップまでの最後の重要な遠征でした。

そしてもっとこのハリルホジッチジャパンが立ち直る、良い方向に行くキッカケにしたいということで、西野技術委員長は最後までハリルホジッチジャパンをサポートするためには何をすべきかということで努力していたというのもご存知のとおりです。

ただ最終的に申し上げたコミュニケーションや信頼関係の部分がマリ戦、ウクライナ戦の後に出てきてしまったこと。それが最終的なキッカケになったのは事実です。

そして西野監督は先週、日本サッカー協会の理事、技術委員長、Jリーグの理事も辞任されました。そして私がこの緊急の状況として、技術委員長だった西野氏を監督として選びました。

どのようなスタッフにするのかというのは監督に一任しているところです」

―会長が直接ハリルホジッチ監督に伝えた時のやり取り、監督の表情や反応について

「4月7日、フランス時間の18時にパリのホテルで直接会いました。

今まで彼とは多くのミーティングをしてきましたが、皆さんからの様々な報道にすごく敏感な人で、その度に私とは話をしてきました。

その時に僕は彼に言ったんですが、『メディアからハリルホジッチさんに解任を伝えるつもりは一切ない。言うんだったら私が直接言います』ということをその時申し上げました。

そういう意味でも、実際に法務関係の方とちゃんと話した上でフランスへ向かったわけですが、『紙一枚でも構わないんだ』ということを言われましたが、さきほど申し上げたように、彼が必死になって日本代表強くしようとし、ワールドカップの出場権を獲得したという実績を考慮し、礼を尽くし、直接言うことを選びました。

直接言った時の状況で言えば、やはりビックリしているというのが僕の印象です。まさかこのことを言われるとはということで、多少動揺もしたし怒りもあったし。それも事実です。

どうしてなんだという理由も含めて聞かれたのも事実です。ただ、あれがあったこれがあった、何があったというのを羅列するつもりはありませんでした。

事実として契約を解除するということを伝え、もちろん選手とのコミュニケーションが足りないというのはお伝えしましたが、実際には総合的ないくつかのことがあるのは事実ですけども、辞めていただく方を傷つけると言うよりは、私たちはそこでしっかりともう線を引いたということをお伝えすることが大事だと思い、今のようなことを伝えました。

彼としては『満足ではない』、『なんでこの時期に』っていうことは仰いましたけど、私としてはしっかりと彼に伝え、少しでも日本が勝てるようにしたいというその気持ちからこの決断に至ったことは彼に伝えました」


―選手からの声は必ずしもネガティブなものだけでなく、ワールドカップ予選を突破した時点では多くの選手がハリルホジッチ監督の戦術に可能性を感じていた。不安要素とポジティブな要素とのバランスは?

また、コミュニケーションの問題や溝がそこまで深まってしまう前に協会や西野技術委員長の職務として留めることはできなかったか、その評価は?

「まず一番目のところでお答えします。

もちろん様々な意見があって、私たちは多分皆様以上にその状況について把握しているつもりです。

予選を突破する前からずっと把握しながらやってきて、そのコミュニケーションのところがこうあった、そして信頼選手がいた、これがだんだん変わってきてそれが逆転してしまったのがウクライナ戦、マリ戦だったと認識しています。

そして西野技術委員長のみならず、様々なスタッフがこういう状況を含めて打開しようとか新たな方法を取り入れようと様々な議論してきたという報告を受けています。

そういう努力をしてきたのも事実ですし、そしてハリルホジッチ監督がしっかりと自分の方法であるということをちゃんと仰られてきたのも事実です。そういう繰り返しがあったけれども、残念ながらしっかりとそこを埋めるまでには至らなかった。

それができなかったのは事実として認めますけども、実際にトライしてきたのも間違いないことだと思っています」

―ワールドカップまであと2ヵ月というタイミングでの解任はデメリットも非常に多い。それ以上に変えなくてはいけない状況に追い込まれてしまっていた?

「その通りです。間違いありません。

逆に言うと、このタイミングだからこそ西野監督になったとも思っています。

もしも前であったら西野監督ではないということもあったかもしれません。

でも残り2ヶ月しかないということを考えると、この時期だからこそこの状況でこの決断をした。それくらいの状況になっていたと私は認識しました」

―そうすると、もう少し早くジャッジできることもあった?

「監督を変えることのリスクも常にあります。それから変えないリスクもあります。これを常に比べながら私たちは議論してきました。

変えれば必ず良くなるという魔法があるんだったら、我々はその方法を取るかもしれません。でも、我々はこのリスクを考えながら、様々な観点から考え議論をしてきました。その度その度にです。予選をしている時からです。

ハリルホジッチ監督をサポートすることに変わりない、これからもやるぞということを常に考えてやって来た。それが最後の最後でそこが変わってしまったということです。

確かにタイミングとしては遅いんじゃないかということはありますけど、最後までハリルホジッチ監督のチームをまたグッと固まれるようなものにしたいということで我々も3月も努力したんですけども、残念ながらそれが実現できなかったということです」

―ワールドカップまでの残り2ヵ月、西野新監督にはこれまでやってきたことを踏襲するような形で指揮を執る?何かガラリと変えるのか?どのような日本サッカーを構築していくべきか?

「まさに『日本サッカー』と言ってくれました。そのところを一番大事にしなければいけません。

もちろん、これまでやってきたことを全否定するわけではありません。ただ西野監督がやりたいことを、やりたいスタッフでそれを全面的にサポートしていきます。

そして我々が築き上げてきたスカウティングであったり、コレクティブに戦う日本の選手たちの能力であったり、そういうものもしっかりと出していける日本らしいサッカーをやってほしいと思っています。

これは(西野監督の就任会見が行われる)木曜日に是非、同じ質問をしていただければと思います」

―後任について他に候補がいたのか?ハリル指揮時にも候補がいたのか?

「最終的なこの段階では内部からということで考えていました

ですから西野監督、手倉森監督とかですね、内部からになってくると考えていました。

それと、それまでのところでいなかったのかと言うと、もちろん常にそういうことは考えていなければいけないと思っていました。

ですけども、今名前をここで出すべきではないと思っています」

―西野氏の能力に疑いはないが、短い期間で準備をしたことがない。実質的にやれるのは3週間で、その中で具体的にやるというのは彼にとっても初めての経験。その点についてどう考慮し決めたのか?

「最終的に良いチームにするところで言うと、やはりチームが一緒になってお互いを信頼し合い、コミュニケーションを取り合ってやれるからこそそのことができると思いました。

それができないのではないかと思ったからこの決断に達したということです。ベースはそこだと僕は考えています。

それから、緊急事態ということで西野さんにお願いをしたわけです。それはやはり内部から、今までの準備を知ってた人がやるべきだと思ったからやっています。

もちろん3週間が短いか長いかは分かりません。逆に言うと短いからこそ皆が集中できる。もしも早くやっていたらもっと違った意味でのまた違った摩擦が出るかもしれない。

この短い時期だからこそ今西野さんにお願いしたというのはあります。得手、不得手はあるかもしれませんが、もうそんなことは言ってはいられない。

残り2ヵ月、実質集まれるのは3週間。そこでやれることは皆でやるというのを考えて、このスタッフになりました。具体的なスタッフのことについてはまた木曜日に話をさせていただきます」

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