トランプ氏追い詰めるポルノ女優の素顔

By 太田清

ストリップショーに出演後、撮影に応じるクリフォードさん=2月23日、米ニューヨーク州(ロイター=共同)

 トランプ米大統領との間の性的関係を口外しないことを条件に、口止め料13万ドル(約1400万円)を渡されたとするポルノ女優ストーミー・ダニエルズ(本名ステファニー・クリフォード)さん(39)の主張を受け、米連邦捜査局(FBI)が、トランプ氏の関係者への捜索に踏み切った。顧問弁護士マイケル・コーエン氏のニューヨークの事務所や自宅、宿泊先のホテルなどを一斉に捜索、トランプ氏とコーエン氏のやりとりに関する記録など数千点の文書を押収したという。 

 今年11月の中間選挙を前に、2016年大統領選へのロシアの介入にトランプ氏の選挙陣営が加担したとされるロシアゲート疑惑に続き、また政権へのダメージとなり得る材料が加わった。クリフォードさん側はメディアへの露出を通じトランプ氏への批判を続ける一方、訴訟を通じトランプ氏を公開の法廷の場に引っ張り出し、宣誓の元、証言させるよう求めている。自らの「体験」を赤裸々に語ることでトランプ氏を追い詰めようとしているクリフォードさんとはどんな人物なのか。米国の報道などから探った。 

▽貧しい子ども時代 

 クリフォードさんは1979年、米南部ルイジアナ州生まれ。幼いころ両親が離婚し、母親の元で育てられた。「家の電気が止められた」こともあるなど、その暮らしぶりは裕福とは言えなかったようだ。17歳で地元のストリップショーに出演。高校卒業後、ストリッパーとして働き始める。芸名である「ストーミー」については、自身が好きなヘビーメタルバンドのベース演奏者が娘を「ストーム」と名付けたことから決めたという。 

 その後、知り合ったポルノ女優の勧めからポルノ映画への出演を始めるが、最初の出演は、その女性との間の「レズビアン・シーン」だった。2004年にはポルノ映画業界の新人賞を受賞。その後、ポルノ映画の監督や脚本執筆も行うようになり、監督作品や出演作が賞にノミネートされるなど、業界での知名度を上げていく。胸を大きくする豊胸手術も受けた。 

 10年にはファンの応援もあり、ルイジアナ州選出の上院議員選への出馬を表明。女性の社会進出や児童保護などを公約として遊説を始めるが、「マスコミは私の出馬をまじめに取り上げてくれない」として途中で出馬を取り下げている。 

 私生活では、2人のポルノ男優との結婚と離婚を経て、10年にポルノ男優兼音楽家である現在の夫と結婚、女児を出産した。趣味は乗馬。現在は南部テキサス州に住み、地元のストリップクラブなどで仕事をしている。トランプ氏との関係がメディアに伝えられるようになって以降は、トランプ氏の選挙公約「アメリカを再び偉大にする」をもじった「アメリカを再び好色にする」をショー出演の際のキャッチーフレーズにしている。 

 ▽娘を思い出す 

 クリフォードさんの主張によると、トランプ氏と最初に会ったのは2006年7月にカリフォルニアとネバダの州境にあったゴルフ場で開かれたチャリティーゴルフ大会。当時不動産王として知られていたトランプ氏にホテルの部屋での夕食に誘われ、関係を持った。当時、メラニア夫人が息子、バロン君を生んでから4カ月しかたっていなかった。 

 ホテルの部屋では、クリフォードさんがトランプ氏が表紙に載っている雑誌で、同氏の尻をたたくおふざけなどもした。トランプ氏はクリフォードさんに対し「君は頭が良くて美しい。娘(イバンカさん)を思い出すよ」と話したという。 

 2人の関係はその後途絶したが、11年にクリフォードさんが雑誌のインタビューでトランプ氏との関係を話そうとしたところ、見知らぬ男から口外しないよう脅迫を受けた。16年11月の大統領選を前に、コーエン氏から関係を口外しないことを条件に口止め料を払うとの提案があり、これを承諾。口止め料を受け取ったが、契約書にトランプ氏自身のサインがなかったとして今年3月、契約無効の確認を求めて提訴した。

 コーエン氏は金銭の支払いは認めたものの、自分の独断でやったことでトランプ氏は知らなかったと主張。トランプ氏自身もクリフォードさんとの関係を否定している。コーエン氏の支払いは、トランプ氏の選挙運動への違法献金に当たるとの疑いがもたれている。 (共同通信=太田清)

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