「くんち」びょうぶ絵 長崎市が購入検討 「諏訪祭礼図屏風」 評価額3500万円「貴重な資料」

 長崎市は、諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」を描いたびょうぶ絵の購入を検討している。国登録有形文化財「富貴楼」の経営者の個人所有物。評価額は3500万円で、実現すれば同市の歴史文化資料の最高額となる。長崎史談会の原田博二会長(71)は「表情や衣装が細かく表現されている。華やかな時代を描いた貴重な資料」と評価する。
 びょうぶ絵は「諏訪祭礼図屏風」。くんち後日に諏訪神社の参道や御旅所で市民が踊りを披露する図柄。神社の石垣などから18世紀後期以降に描かれたとみられる。署名や落款は未記載。8枚の絵をつないだ「八曲一双」が対になっている。左、右隻とも横5・32メートル、縦2・04メートル。
 所有者が県や市に購入を持ち掛けていた。識者4人でつくる「長崎市資料取得委員会」が昨年12月に調査した結果、人物の描写が緻密で色彩豊かな点など芸術性の高さが評価された。同委員会の委員長も務める原田さんは「長崎奉行や外国人も描かれ、まちのにぎわいの様子が分かる。長崎に留めておくべき貴重な資料」と語る。
 市は2018年度一般会計当初予算に取得費3500万円を計上した。所有者と仮契約を結んだ後に6月定例市議会に提出予定の取得関連議案が可決されれば、購入となる。長崎歴史文化博物館で所蔵、公開する考えだ。
 市の歴史文化資料取得を巡っては、1999年に川原慶賀作の「出島図」を最高額の約1500万円で購入。昨年も江戸期の長崎くんちが描かれたびょうぶ絵「長崎諏訪神社祭礼図屏風」を1100万円で買い、一般財源から支出していた。
 高額支出も想定される資料購入による財政負担を軽減し、取得を円滑にするため、市は本年度に「歴史文化資料取得基金」を創設した。2027年度末まで毎1千万円を積み立て、資料購入費に充当する。長崎市に縁が深く学術、美術性を活用できる資料が対象。歴史資料を充実させて市の財産として後世に残していく。

「諏訪祭礼図屏風」の右隻。諏訪神社下の参道で長崎奉行に踊りを披露する市民の様子が描かれている(長崎市提供)
「諏訪祭礼図屏風」の左隻。御旅所で奉納踊りをする様子が表現され、左に現在の県庁坂を上る行列が描かれている(長崎市提供)

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