フェミ・クティ『ワン・ピープル・ワン・ワールド』 フェラの遺志を継ぐ現代のアフロビート

フェミ・クティ『ワン・ピープル・ワン・ワールド』

 70年代、アフロビートでナイジェリアの政治腐敗と人種問題を痛烈に批判し世界の注目を浴びたフェラ・クティ。しかしその後も続いた政府の弾圧、そして彼の死でそのパワーは影を潜めたかに思われましたが、今世紀に入って彼の生涯がブロードウェイミュージカル『フェラ!』となりトニー賞を受賞するなど再び注目されました。その動きを牽引してきたのがフェラ・クティの長男フェミ、本アルバムの主人公です。

 フェラが作ったアフロビートはリピートするリズムと体制批判する歌詞がコール&レスポンスされるもの、長い曲が多かったのですが、フェミはそのフェラのスピリットそのままに現代のアフロビートを作り上げました。よりポップにダウンサイジングされリピートするリズムはループ・トラックとなりヒップホップとの共通点をも感じさせます。アメリカならぬ「アフリカを再び偉大にする」をテーマに、現代にはびこる格差、差別、汚職、テロリズムを批判し、一つの世界と平和を訴えかけます。

(ホステス・2490円+税)=北澤孝

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