ジャック・ホワイト『ボーディング・ハウス・リーチ』 孤立主義に多様性で応戦するロック・スピリット

ジャック・ホワイト『ボーディング・ハウス・リーチ』

 70年代、ポップ化したロックにそのスピリッツを取りもどしたのがパンク。97年、デトロイトからギターとドラムの姉弟二人という最小のユニットでデビューしたガレージバンド、ザ・ホワイト・ストライプスはブルースに根ざしたギター・サウンドでロックの原点を再提案、3枚のアルバムはグラミーに輝きます。本作はそのギター、ヴォーカルであるジャック・ホワイトの4年ぶり3作目のソロ・アルバム。

 ソロ・アルバムでもアナログ機材を使うなどピュアなロックを求めてきた彼ですが、近年R&Bやヒップホップさらにはラテン・ミュージックにも圧倒されているロックの現状に危機感を感じた彼がなんとプロツールを使い、ヒップホップやR&Bのアーティストとコラボして制作した注目作です。生々しいロックにヒップホップ、R&B、ジャズ・ファンク、ゴスペル、ラテンの要素を取り入れて全く新しいロックンロールを創造したのです。まさに孤立主義が渦巻く現代に、多様性で応戦するオルタナティヴ・ロックの完成です。

(ソニー・ミュージック・2500円+税)=北澤孝

© 一般社団法人共同通信社