【F1バーレーンGP 無線レビュー】大混戦の中団バトルを制したガスリーが歓喜の叫び

 第2戦バーレーンGPでは中団グループの混戦模様がより一層激しさを増した。トロロッソのピエール・ガスリーがその先頭を走り、ハースのケビン・マグヌッセン、ルノーのニコ・ヒュルケンベルグ、マクラーレンもフェルナンド・アロンソが追いかけ、最初から最後まで見応えのある戦いが繰り広げられた。 

 1周目から波乱は起き、ガスリーが4番手に浮上した一方でターン4ではブレンドン・ハートレーとセルジオ・ペレスが接触し、マグヌッセンも接触を受けていた。

ハートレー(以下、HAR)「マシン左側をチェックしてくれ!」

トロロッソ(以下、STR)「(フロントのダメージで)少しだけ空力バランスが後ろ寄りになっているけど、ダウンフォース量自体には問題ないよ」

ペレス(以下、PER)「かなり大きくヒットされた!」

マグヌッセン(以下、MAG)「フロントウイングのダメージをチェックしてくれ」

ハース(以下、HAS)「今のところ何も(テレメトリー上の)問題は報告されていない。ストレート走行時に目視でもチェックするよ」

 レッドブルが止まったためバーチャルセーフティカーが導入され、4周目のバックストレートでレースが再開されると、ガスリーとマグヌッセンが激しくやり合った。ターン11で接触しながらもポジションを守ったガスリーは、すぐさまDRSが解除されその勢いで襲いかかるマグヌッセンを続く5周目のターン1〜2でもクロスラインで抜き返し4位を死守した。

MAG「ペースは僕の方がGASより圧倒的に速いよ」

 そうチームに伝えたマグヌッセンだったが、ここからはじわじわとガスリーが引き離していく。

HAS「ターン4の入口でタイムを失っているよ」

MAG「それはタイヤを労るためにやっていることだよ」

HAS「OK」

マクラーレン(以下、MCL)「3台前のGASはブレーキに問題を抱えているようだ」

アロンソ(以下、ALO)「OK、僕のペースにはまだまだ余裕がある」

 ガスリーは8周目のターン11でブレーキに不具合が発生し飛び出した。テストでもブレーキ系のトラブルが出たことがありしばらくは慎重な走りが要求されたが、問題はすぐに解消されペースは再び元に戻った。

 13周目にマグヌッセン、14周目にアロンソがピットインすると、これに反応してガスリーとヒュルケンベルグも翌周ピットインし順位はそのままでバトルが続く。

HAS「GAS(ガスリー)もHUL(ヒュルケンベルグ)もピットインしたぞ。全力を尽くせ、カモン!」

MCL「前の3台はもう1回ピットインして中古のSSに換えるはずだ。我々がどのタイヤを残しているか、忘れるな」

 アロンソはソフトでスタートしたため、最初のピットストップではミディアムに換えざるを得なかった。スーパーソフトに換えれば戦略が2ストップに限定されてしまうため、自由度を残すためにはミディアムを履くしかなかったからだ。

 しかし新品のスーパーソフトを残しているため、ミディアムのまま1ストップ作戦で走り切るのではなく、2ストップで最後に攻勢を仕掛けることを念頭に置いていたようだ。

MCL「後ろのSAI(カルロス・サインツJr.)がピットインした。ここから2回目のピットストップが始まるかもしれない」

ALO「まだ早すぎるよ」

MCL「敵はどちらもSS-SS-Sで2ストップだ」

ALO「残り何周?」

MCL「残り29周だ」

ALO「ということは最後にSで苦しむことになるだろうね」

MCL「了解だ」

 28周目にはフォース・インディアとバトルするロマン・グロージャンに抑え込まれたマグヌッセンが怒りを露わにするが、グロージャンはその周にピットに呼び戻されて大きなダメージはなかった。

MAG「WTF! 一体何をやっているんだ! カモン!」

HAS「GROはこの周ピットインするよ」

MAG「XXX! どきやがれ!」

MAG「よくやってくれた、XXX!」

 一方、周回遅れになって1周減算されることを前提としていたのかルノーPU勢は燃費にかなり苦しんでおり、首位セバスチャン・ベッテルが追い付いてくるのかどうかを気にしていた。周回遅れになるならば燃料セーブが1周分不要になり、その分だけプッシュすることができるからだ。

ALO「VETはどこだ? 彼の後ろについてフォローするのが良いんじゃないか?」

MCL「我々もそれは考えていたが、まだやらないでくれ。まずはHULを抜くのが先だ」

 最後はヒュルケンベルグに追いすがったアロンソだが、追い抜きは成功しなかった。

MCL「0.8秒差だ。チャンスはあと1回だ。オーバードライブはするな、成功させろ」

 51周目、マグヌッセンのペースが急に落ちた。タイヤが終わったわけではなく、バイブレーションが出始めたからだ。ロックアップさせたわけではなく、サスペンションの不具合だとマグヌッセンは推察した。

MAG「あぁ、左フロントから激しいバイブレーションが出ている。フラットスポットは作っていないから、フロントサスペンションの問題だと思う」

 これでガスリーとマグヌッセンの差はさらに開いていき、ずっと集団の先頭でスリップストリームを使って空気抵抗を減らし燃費を稼ぐこともできなかったにもかかわらず、ガスリーは燃費に苦しむこともなく4位のままでチェッカーフラッグを受けた。

STR「P4、P4だ!」

GAS「信じられない、信じられないよ! ファンタスティックだ! みんな本当にありがとう。僕らは戦える!」

 その無線にトロロッソのクルーは歓喜に沸き上がった。上位3台のリタイアもあったとは言え、中団グループの中で正面から戦い実力で勝ち獲ったその最上位には、何よりも大きな価値があった。

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