【MLB】LA名物コラムニストが見る大谷翔平 「謙虚さとリスペクトが存在する」スター

エンゼルス・大谷翔平【写真:Getty Images】

大谷は「カーショータイプ」 地元記者が感じ取る「謙虚さとリスペクト」

 衝撃のメジャーデビューを飾り、わずか10日間で今季序盤戦最大のスターとなったエンゼルスの大谷翔平投手。9日(日本時間10日)には、日本人メジャーリーガーとして最速&最年少でア・リーグ週間MVPに選出されるという偉業を達成したが、米メジャースポーツを長年取材している名物コラムニストは二刀流のスーパースターについて、1995年にメジャー上陸を果たし「トルネード旋風」を巻き起こした野茂英雄氏のポテンシャルよりも「間違いなく上」と分析している。

 大谷は、メジャー2試合目の登板となった8日(日本時間9日)の本拠地アスレチックス戦で先頭打者から19人連続で凡退に仕留める快投を見せたが、その前に打者としても3試合連続のホームランをマーク。漫画や小説の世界でもあり得ないような圧倒的なパフォーマンスをいきなり見せつけた。

「オオタニはアメリカで巨大なインパクトを与えている。彼のポテンシャルはヒデオ・ノモよりも間違いなく上だろう。オオタニはイチロー・スズキという名前ではない日本人アスリートの全ての成績を上回ることは間違いないと思う。彼はまだ23歳だ。引退後の殿堂入りが確実なイチローに並ぶ可能性も感じさせてくれる」

 こう話したのは、米スポーツメディア「スポーティングニュース」のジョセフ・ディポリート記者。ロサンゼルスを拠点にエンゼルスなどMLB球団のみならず、NHLロサンゼルス・キングス、アナハイム・ダックスやNBA、MLSなど様々な競技で取材活動を展開。取材記者会見でも、激しい身振りとともに大谷やマイク・ソーシア監督に質問をぶつけている名物コラムニストだ。

 ドジャースも取材するディポリート記者は23年前にロサンゼルスで巻き起こったトルネード旋風も目の当たりにしている。ドジャースとマイナー契約を結んで海を渡った野茂氏は、1年目から13勝6敗、防御率2.54、リーグ最多236奪三振と活躍。当時、長期ストライキで下降していたメジャー人気を回復させる大きな役割を果たした。「ノモマニア」と呼ばれるファンがアメリカで急増するなど社会現象になったが、「ベーブ・ルース2世」はパイオニアを超えていくとディポリート記者は予想している。

 アメリカ第二の都市ロサンゼルスは、ハリウッドなどの娯楽産業で賑わう。この地で大谷はどんなスターとして受け入れられていくのだろうか。

大谷はなぜ「カーショータイプ」のスーパースターになるのか

「ロサンゼルスの人々はスーパースターを愛している。オオタニに関してはタレントという部分でスーパースターになる素養に疑いの余地はない。だが、パーソナリティという点では時間がかかりそうだ。マジックやコービーのような言動や、個性という点では派手派手しさを彼は見せない。謙虚さとリスペクトが存在する。彼は自分の能力を見せつけたい人間ではない。これまでのところエゴの大きさも見せていない」

 ディポリート記者がロサンゼルスを代表するスーパースターに挙げたのは、NBAロサンゼルス・レイカーズの2人のレジェンドだった。マジック・ジョンソンは1980年に華麗なパスプレーで「ショータイム」と呼ばれたオフェンスを操った。MVPに3度輝き、現役引退後はドジャースの共同オーナー、レイカーズの球団社長も務めている。一方、コービー・ブライアントはNBAファイナル優勝5度を誇る英雄。様々なNBA記録を保有しており、どちらもレイカーズ一筋の生え抜きだった。

 ロサンゼルスの人々が愛したコービーやマジックは、プレーに加えて個性豊かな言動も特徴だったが、謙虚な大谷とは対照的だという。

「コービーには最高の存在になりたいという強烈な推進力があった。その点ではオオタニと類似点もある。現在のスーパースターと比較できるとするなら、カーショーだろう。エゴを出さない。ファンにも自分の思いをさらけ出すようなこともあまりしないタイプだ。その代わり、フィールド上での活躍で自分を証明する。オオタニがスーパースターになれるとすれば、カーショータイプだろう」

 ディポリート氏はこう分析した。メジャー11年目のメジャー最強投手、ドジャースのクレイトン・カーショー投手が大谷の未来のスター像と重なるというのだ。カーショーはMVP1度、サイ・ヤング賞3度などの実績から、30歳にしてすでに引退後の米国野球殿堂入りが確実視されている。かつての同僚、黒田博樹投手を尊敬する物静かな最強左腕こそが、スーパースター大谷の歩む道ではないか、とベテラン記者は分析している。

 大谷はマウンドで、打席で、雄弁に語る――。コービーやマジックといったレイカーズが世界に誇るスーパースターとは異なるスター街道をロサンゼルスで駆け抜けるのだろうか。

(Full-Count編集部)

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