欧州厚板大手の「ディリンジャー」、17年生産6年ぶり200万トン台

 欧州の大手厚板メーカー、ディリンジャー・ヒュッテが公表した2017年実績によると、厚板生産は前年比8・5%増の204万2千トンとなり、6年ぶりに200万トン台へ達した。

 厚板の市場環境は依然厳しいものの、洋上風力発電や欧州内のラインパイプ向け需要が追い風となった。アンチダンピング(反不当廉売=AD)措置の発動で中国からの輸入鋼材が減ったことも寄与したものとみられる。

 粗鋼生産は11・2%増の252万1千トン。厚板生産はドイツのディリンゲン製鉄所が8・3%増の139万1千トン、単圧のフランス工場が9%増の65万2千トンとともに増加した。16年末から一定の値上げも進み、売上高は20・4%増の21億2200万ユーロと3期ぶりに20億ユーロ台へ乗せた。

 税引前利益(EBIT)は8700万ユーロ(前期は8千万ユーロの赤字)となり2期ぶりに黒字化するなど、業績も回復傾向にある。しかし同社は「中国以外の輸入材が高止まりしている」と説明。米国が発動した「通商拡大法232条」により各国が欧州への輸出を増やしかねないとし、18年の生産は前年並みか小幅減になるとの見通しを示した。

 欧州当局は米への対抗措置として、鉄鋼輸入に対するセーフガード(緊急輸入制限措置=SG)の調査を始めているが、この発動を期待した主張とみられる。

 ディリンジャーはザールシュタールやアルセロール・ミッタルが大株主の非上場企業。ザルツギッター・マンネスマンとともにユーロパイプへ折半出資しており、欧州ではエネルギー向けなど高品質の厚板を造れる数少ないメーカーとされる。

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