南鳥島海域のレアアース泥、世界需要の数百年分に相当 早大、東大の研究グループが確認

 早稲田大学の高谷雄太郎講師と東京大学の加藤泰浩教授らの研究チームが、南鳥島(東京都)周辺の排他的経済水域(EEZ)内に存在するレアアース泥の資源分布の可視化とそれに基づく資源量の把握を行い、世界需要の数百年分に相当する資源量が存在することを確認した。レアアース濃集鉱物を選択的に回収する技術も確立し、資源開発の経済性を大幅に向上させる技術も確立した。

 研究チームは、南鳥島EEZ南部海域に存在する有望地域のレアアース資源分布を初めて可視化することに成功した。特に、北西に位置する一角に極めてレアアース濃度の高い地域が存在することが確認され、同地域(約105平方キロ)だけでも資源量は約120万トン(酸化物換算)に達し、ジスプロシウムは現在の世界需要の57年分、テルビウムは32年分、ユウロピウムは47年分、イットリウムは62年分に相当することがわかった。さらに有望地域のすべてを合算すると資源量は1600万トンを超えることも明らかにした。

 また、粒径分離によってレアアース泥中のレアアース濃度を最大2・6倍まで高めることにも成功した。これは中国のレアアース鉱床の20倍程度の品位になるという。同技術により、泥重量が大幅に減少するため、海上への揚泥や製錬コストの削減につながり、経済性を大幅に向上させることが可能となる。

 レアアースは最先端産業に必須の金属材料だが、世界生産は中国の寡占状態にあり、その供給構造の脆弱性が課題となっていた。こうした中、加藤教授らの研究グループが11年に太平洋の広範囲に高品位のレアアース泥が分布していることを発見。さらに13年には南鳥島周辺のEEZ内に超高濃度のレアアース泥が存在することを確認していた。

 研究グループでは、今回の成果により、海底鉱物資源を現実的に開発可能な資源として初めて議論の俎上に載せることに成功したとしている。また、同研究成果をもとに南鳥島のレアアース泥の開発が実現すれば、日本だけでなく、世界でも海底鉱物資源の開発が進展し、レアアースを活用した多様な最先端産業の発展・創出といった波及効果も期待している。

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