平和への思い継承 中学生初参列 戦没者に献花 佐世保・吉井地区

 長崎県佐世保市の吉井地区出身の戦没者282柱を慰霊する追悼式が12日、佐世保市吉井町の吉井忠霊碑前広場であった。平和への思いを受け継いでもらおうと地元の中学生も初めて参加。故郷の戦没者に思いをはせ、戦争のない世界を願った。
 遺族ら約80人に交じり、市立吉井中の生徒4人も参列。少し緊張した表情で献花台に近づき花を手向けた。2年の長尾奏弦さん(13)は「穏やかに生活している町でこんなにも戦争で亡くなった人がいると知り驚いた。人と人のつながりを大切にしたい」と静かに語った。
 「戦後70年が過ぎた今、伝えていく人がいないと平和は続かない」。主催する市遺族会吉井支部の角田隆一郎支部長は危機感をにじませる。支部によると現在は約60人が所属しているが、多くは戦争で家族を亡くした人々の子どもの世代。参列者も年々減っているという。
 そこで役員で話し合い、若い世代に思いを継承しようと吉井中に参列を呼び掛けた。同校はこれまで、平和学習の機会が佐世保大空襲の講話や長崎原爆の日に合わせた平和集会に限られていた。松永紀人教頭は「教科書でしか戦争について教えられない今、遺族に実際に会えるだけでも違う」と意義を強調する。
 角田支部長は「中学生が参加してくれて本当にありがたい。二度と戦争が起きないように備えと努力をしたい」と話した。

献花台に花を手向ける中学生=佐世保市、吉井忠霊碑前広場

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