親、失った悲しみ 後から ロシアの生徒へ 丸田さん遠隔講話

 インターネットを使い、被爆者が遠隔地へ体験を語り意見交換する「ピースネット」が12日、長崎県長崎市平野町の国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館であり、ロシア・サンクトペテルブルクで日本語を学ぶ生徒ら約50人に向けて、丸田和男さん(86)=城山台1丁目=が話した。
 ピースネット事業は2004年度に始まり、今回で336回目。丸田さんは旧制瓊浦中1年生だった13歳の時、爆心地から1・3キロの自宅で被爆。倒壊した家の下敷きになり、重傷を負った。
 現地の生徒は、原爆で母親を亡くした丸田さんに対し、「肉親を亡くした時はどのような感情だったか」と質問。丸田さんは「肉親を亡くしたのは私だけではないし、敗戦の混乱もあり『悲しい』という本来の感情にはなれなかった」と答えた。その上で「年月がたち、自分に子や孫ができて、親を亡くしたということをしみじみと感じるようになった」と現在の心境についても生徒たちに語り掛けた。

サンクトペテルブルクの生徒へ向け被爆体験を語る丸田さん(中央)=国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館

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