あの日、今、これから

 続いていた国道が、切り落とされたようにいきなり途切れ、そこから先は深い谷だった。阿蘇大橋が架かっていた所だが、橋は崩れ落ちてしまった。遠くでは山が崩れ、山肌をあらわにする▲昨秋、熊本地震の被災地を訪ねると、いまだ寂しい風景が広がっていた。阿蘇大橋の下流の車から大学生の亡きがらが見つかった話が思い出される。捜索の打ち切り後も父母は自力で捜しに捜して、とうとう息子を見つけた▲熊本城に足を運べば、石垣が崩れっぱなしの所がいくつもあった。400年間、武者返しの壮麗な姿を保った石垣の3割が修復を要し、全体の再建には実に20年かかるという▲城跡は国の特別史跡だから、元と同じ位置に、同じ石を使って組むのが原則らしいが、地震はまた起こり得る。前と同じ姿に復元しつつ補強も怠れない。その両立は「超」の付く難問と聞いた▲午後9時26分、のちに「前震」と呼ばれる大きな揺れがここ長崎県でもあった。グラリときたのを体が覚えている人も多いだろう。熊本地震の発生からきょうで2年▲復旧、復元が待たれる場所がある。待っても戻らない人と、悲しみ続ける人がいる。今なお3万人を優に超える人々が仮住まいをし、被災は続いている。あの日と、今と、これからを語る被災地の言葉に耳をすましたい。(徹)

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