金属行人(4月17日付)

 「10年偉大なり、20年恐るべし、30年歴史になる、50年神の如し」とは、続けることの大変さ、すごさを説いた中国の格言である▼会社設立から50年の節目を迎え、その間を共に歩んだ鋼材加工業のオーナー経営者にその秘訣を聞いたら「縁」「運」「機」との答えが返ってきた▼戦後の荒廃で職にあぶれていたのを見かねた知人から声が掛かり、関西から関東に移った縁がすべての始まり。鉄を知り、商売を学び、独立したはいいが不況が到来する。そんな折、取引先の1社から業態変更を勧められ、指南を受けたのは運が良かった▼素材主体の仲間売りから直需向け加工事業に転身したのがきっかけとなり、名だたる製造業大手との取引が始まる。折しも経済成長期。取引先の拡大を見越して能力増強したタイミングが絶妙で、旺盛な注文をこなす受け皿機能を果たし顧客の事業発展を縁の下で支えた▼その後の景気浮沈で絶体絶命の経営危機にも陥ったが、不断の努力と周囲の支えで乗り切り次世代に事業を継承。現在に至る▼刻んだ歴史の節々には恩人や救世主の存在も。オーナーは「人に恵まれた」ことにも感謝しきりだ。この会社のように「大切なもの」をよりどころに〝神の如し〟鉄屋が他にも多く存在するのは、実に頼もしい。

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