東大研究グループ、複数材料の「ロボット積層技術」開発 材料開発スピードが飛躍的に向上

 東京大学・生産技術研究所の増渕覚特任講師らの研究グループは、個別の材料では得られない特徴を持つ新規材料を生み出すため、複数種のシート状の原子層を自在に積み重ねるロボットシステムを開発した。熟練の研究者でも長時間かかる作業を20倍以上の効率で行うことができるとともに、手作業では実現できなかった複雑な構造を持つ複合原子層の作製も可能。複合原子層による有用な材料の開発スピードを飛躍的に向上させると期待されている。

 研究グループは、シリコン基板上に形成された原子層を光学顕微鏡で探索し、得られた情報をもとに積層するシステムを開発した。同システムにより、グラフェンと六方晶窒化ホウ素が交互に29層積み重なった複合原子層を8時間以内に作成することに成功した。

 複合原子層は、単原子層膜まで薄層化した二次元結晶を、ブロックを積み重ねるように組み立てた分子材料。原子レベルで精密に分子の境界面を制御可能で、多様な材料(半導体、金属、超電導体など)が選択できることから既存材料では実現できなかった新規物性を発現させる技術として注目されている。ただ、原子層の組み立て工程は、研究者の手作業で行われており、構造の複雑化などで研究効率が低下していることが課題だった。

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