平塚市営龍城ケ丘プール跡地を含む海岸エリアの再整備を巡り、地元のサーファーらでつくる市民団体が周囲の景観との調和などを求めて声を上げている。3月には、落合克宏市長と市議会議長宛てに要望書を提出。団体代表の一人は「事業そのものに反対していないが、市民が誇る日本随一の景観と自然環境を次世代にも残してほしい」と訴えている。
要望書を提出したのは、市民団体「平塚の海を考える会」。市内のサーファーや写真家、主婦ら地域の海への愛着で結び付いた30人で昨年12月に発足した。
市によると、国道134号沿いにある同プール(2013年閉鎖)跡地は約7千平方メートル。市は、周辺にある県管理の土地約2万3千平方メートルも含めて一体的な整備を進めようとしている。
昨年6月の改正都市公園法の施行で、「パークPFI」制度と呼ばれる公園事業の幅広い民間委託が可能になったことを受け、市は同制度を導入、民間のノウハウを公園事業に生かしたい考えだ。公園内にはカフェやレストランなどの設置を想定し、20年の東京五輪前に施設の一部先行オープンを目指している。
一方、同会は、昨年11月の住民説明会などで住民側の関心の低さや、漠然とした構想であるにもかかわらず着々と進められている市の計画に危機感を抱いたという。整備次第では、海岸沿いにマンションなどの人工物がなく、晴れていれば富士山を望める湘南地域でも数少ない景観が壊されかねない、としている。
同会代表の一人、写真家の鈴木雄介さん(42)は「美しい自然の景観が残る『平塚らしい湘南』を残してはもらえないか」と主張。平塚沖で撮影し、19年度の市職員募集の冊子にも採用された自身の写真を紹介しながら、景観の保全の重要性を訴える。
市長らに提出した要望書では、▽景観維持のために開発はプール跡地に限定▽養浜をするよう市が県や国に要請▽利便性向上や回遊性確保に向けてサイクリングロードなど動線整備-の3点を、公募時の指針などに反映させてほしいと求めた。
今年1月には市側と意見交換会も実施。落合市長は「20年は国の観光の大きな節目なので何らかの形でスタートさせたい」と整備に前向きながら、意見交換を踏まえ「事業者の提案を受けて精査し、乱開発することなく景観や自然、平塚の良いものを残しながら設置したい」と一定の理解を示す。
鈴木さんは「平塚らしい自然を残した、お互いに歩み寄った施設になったら」と願っている。