被災者支援の権限移譲、黒岩知事「同意せず」 

 災害時の仮設住宅整備など被災者支援の権限を都道府県から政令指定都市に移すことを可能とする「災害救助法」改正案を巡り、黒岩祐治知事は17日、「法改正しても、神奈川県は同意しないから意味がない」と述べ、政府主導による法改正の流れにくぎを刺した。救助主体の多元化を懸念し権限移譲に否定的な考えを示した形だが、法案を骨抜きにしかねない発言に政令市側の反発は必至だ。都内で開かれた全国知事会の会合で語った。

 内閣府が13日の自民党災害対策特別委員会で示した改正案の概要によると、権限移譲を受ける政令市は都道府県と同レベルの災害対応能力を持ち、当該道府県の同意を得ることが前提。人口や財政規模、組織体制といった具体的な指定基準は、法成立後に協議の場を設けて規定するとしている。

 同委員会には、指定都市市長会会長の林文子横浜市長も出席。「政令市は財源負担していながら救助内容の決定や実施ができない」などと訴え、早期法改正を求めていた。

 知事会で黒岩知事は、同委員会で知事会の主張を代弁した内容を報告。「政令市と意見が平行線であるにもかかわらず、強引に改正するのは拙速。自民党の委員からも中途半端という指摘があった。まさにその通り」と語り、法改正ありきの動きに改めて反発した。

 また、「大規模災害への対応はシンプルでなくてはならない。権限移譲が嫌なのではなく、県民の命を救うという一点で議論している」と強調。迅速な救命活動には指揮命令系統の一元化が不可欠とし、政令市側が求めている権限移譲は広域的な初動態勢の確立に逆行するとの認識を示した。

 会合後には、現行制度の維持について「全国知事会の総意でもある。一丸となって主張を続けていきたい」と述べ、引き続き法改正の阻止を目指す意向を示した。

災害救助法の改正について意見を述べる黒岩知事=都内

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