金属行人(4月19日付)

 「また逢う日まで」「UFO」「北の宿から」「勝手にしやがれ」などのヒット曲を飛ばした阿久悠さんは、かつて上梓したエッセー『清らかな厭世』で「犬は一日中順番を付けているそうだ」と語っている。いろいろ探ってみると馬などでもパターンは同じで、広く動物に見られる思考のようだ▼阿久悠さんは続ける。「何に順番を付けるかというと、自分以外の人やペットに対して、自分が上位か下位かをずっと考えている」。しかもそれに明確な基準があるわけではない。ごく主観的に順位付けするらしい。そして、人は「順位を付けないと安心できない」のだと嘆く▼昭和初期には何でも番付(ランキング)にすることが流行した。現在も金融と経済の世界で「格付け」「評価」なるものが重用される。鋼材流通などの世界でも番付を横目に協調なき競争がクローズアップされる。市場が縮小する中での生き残りはとても切実なのだが。とはいえ、かつてのお互いを認め合い、協力し合うということも本当は重要ではないのか▼どうも、人間社会全体にその傾向が強まっているように思えてならない。人間とて動物、本来何の違和感もないが。若干首をかしげるとすれば「コンピューター」を礼賛し、人間の上に位置付けるような風潮。

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