『坂口健太郎写真集 25.6』一人旅の若者は電気羊の夢を見るか

 ずっとあなたが好きでした。なぜならくっそイケメンだから。いいわー、童顔なのにいい体してるとか最&高。デビュー当時の榊原郁恵みたいで最&高。職場の若い子なんて「瀬戸内の小さな島でサカケンと二人でパン屋をやるのが夢」とか言ってます。和歌山に住む男の趣味がことごとく合わない叔母(私が瑛太なら、叔母はその弟)ですら、なけなしの女性ホルモン全開で骨抜きされにかかっています。もはや男性に向ける最大の賛辞が「サカケンに似てる」になる日も近いのではないか、そんなことないか。と揺れる想いを身体中に感じる今日この頃、発売されましたよおっかさん、坂口健太郎初の写真集だよおっかさん!バンザーイ!

 タイトルの『25.6』とは、25歳から26歳の坂口を撮った、という意味だそうで。彼の一年間、春夏秋冬を収めた本書。春は桜、夏は花火に秋は地元で冬は秋田に一人旅。ありとあらゆるサカケンが見放題なわけですが、つまらん。え、私なにか言いました?言いましたよねそうですね。私だって信じたくありません。しかーし、こんなこと、言いとうないが敢えて言う。この写真集、まっったく面白くないんですよよよよy~!!!

 なぜか。考えました。去年「メンズノンノ」モデルを卒業した坂口への、これ多分ご褒美写真集だから。気心知れたスタッフと和気藹々と撮ってるから。だってさー「冬は秋田に一人旅」とか言ってるけど、一人なわけないじゃん。スタッフいるじゃん。最低でもカメラマンいるじゃん。そんなん一人旅じゃないじゃん。一人旅を装った別物じゃん。つーか夜絶対宴会してるだろ。って感じがプンプンなのですよ。緊張感なさすぎ。それにね巻末のインタビューで「一人旅のテーマは孤独」みたいな話がありますが、なにそれ超つまんないんですけど。だって撮られているっていう自意識はどうしたって拭えないんだから、そんなのかりそめの孤独なんですよ。わかる?あとね!温泉シーン掲載するなら、乳首にレタッチ入れんじゃないよと言いたい!ぼかしてないでサービスだろそこは!(ただいま不適切な発言がありました)

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 取り乱して、ますよね。なんでー。ああ坂口健太郎が好き過ぎて私が私じゃなくなっていくー。いやもっぺん真面目に話しますとね、ゆるふわのおしゃれ男子をゆるふわに撮るだけじゃなんの面白みもないという、至極当たり前のことに気がついたんですよ。一人旅風の写真を撮るくらいなら写真家とがっぷり四つに組んでガチのコミュニケーションを切り取ってみせろよと言いたいわけであります。

 あれ、私本当に好きなのかな、わかんなくなってきたけど言えることが一つ。一人旅のポートレートは撮れない。アンドロイドは電気羊の夢を見ないし、一人旅の若者のポートレートは存在しない。一人旅風は一人旅じゃないし、旅の途中で自撮りするのはもっと違う。なぜならここにはいない、この写真を見る誰かへの顔になるから。それがわかっただけでよしとしましょう。それともうひとつ。サカケン、やっぱイケメン。だから許す。

(集英社 2200円+税)=アリー・マントワネット

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