新種イソギンチャク “海のエビ天”三崎で発見 東大ら研究者が論文発表 三浦市

ノリカイメン科の一種から赤い触手を出すテンプライソギンチャク写真/伊勢優史氏(元・東大三崎臨海実験所)

 東京大学などの研究チームは今月9日、荒井浜海岸で採集したカイメン(海綿)の中から、共生する新種のイソギンチャクを発見したと発表した。ムシモドキギンチャク類の極めて珍しい形態・生態を持つ種で、「テンプライソギンチャク」と命名。チームは「進化系統や海綿動物との共生に関する研究で重要な例になる」と喜びを語った。

 このほど新種と判明した「テンプライソギンチャク」(Tempuractis rinkai)。和名はベージュ色をしたカイメンから赤い触手を出す様子が、エビの天ぷらに似ていることに由来する。

 同大大学院生で生物科学を専攻する泉貴人さんや当時特任助教だった伊勢優史さんら研究チームは、小網代にある東京大学三崎臨海実験所そばの荒井浜の磯でノリカイメン科の一種を採集。解剖などを行った結果、その内部に多数群生する体長3〜4mmの微小なイソギンチャクを発見したという。大きさ、独特の刺胞、カイメンの中に共生する特殊な生態など、ムシモドキギンチャク科のなかでも例を見ない異なる特徴をしていたことから新種と判断。もともと同科のイソギンチャクは砂などの気質に体を埋めるように生息するが、海綿動物との共生が詳細に観察できたのは荒井浜が世界で初めてで、以降は新潟県佐渡島や三重県鳥羽市でも確認されている。

 国内での同種の分類学的研究は進んでおらず、その数は10種にも満たない。どのようにして共生に至るか不明な点も多いため、同チームは今後、飼育・発生実験を通して生態解明を進めていきたいとしている。

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