歌舞伎 女形で大役 瓊浦高出身の2人 東京・国立劇場で来月公演

 劇団前進座が5月、東京・国立劇場で上演する歌舞伎公演「人間万事金世中(かねのよのなか)」で、主要な女性の登場人物を、長崎県出身の若手所属俳優2人が女形としてそれぞれ演じる。共に長崎市出身の忠村臣弥(しんや)(31)=本名・竹下雅臣(まさおみ)=と玉浦有之祐(30)=同・本村祐樹=。「白浪五人男」で知られる幕末-明治時代の歌舞伎作者、河竹黙阿弥が英国の戯曲を翻案し、1879(明治12)年に初演された異色作。そろって大役を射止めた2人を都内の稽古場に訪ね、意気込みを聞いた。
 同作はリットンの戯曲「マネー」を基にした日本初の翻案劇とされ、明治期を舞台にした「散切物(ざんぎりもの)」と呼ばれる演目の一つ。明治初頭の横浜を舞台に、長崎の親類の死去で莫大(ばくだい)な遺産を手にした正直者の主人公・林之助(河原崎國太郎)が、強欲な伯父一家らに翻弄(ほんろう)される筋書き。忠村は林之助を慕うヒロインおくら役、玉浦は伯父の娘おしな役を務める。
 2人は瓊浦高(長崎市)演劇部出身。いずれも高校時代に前進座の舞台を見て俳優を志し、卒業後、付属の養成所を経て入った。
 忠村は2008年入座。同年の舞台で早々に主役を得て頭角を現し、大役を演じてきた。今回は不遇の身の上ながら主人公を陰で支えるヒロイン役。同作について「せりふの七五調が見どころ。しっかりと明確に演じたい」と抱負。前進座では初演とあって「心優しい典型的な役柄の中にも、明治の女性像を作り上げて表現できれば」と意欲。
 1年後輩の玉浦は09年入座。13年に女形を初めて演じて開眼。忠村らと同座で女形の継承に取り組む若手の一人だ。芸名は出身校の「瓊浦」を基にしている。強欲な半面、おかしみも感じさせる伯父一家の娘役。「やったことのない役で難しいが、自分が楽しめるところまで持っていけたら。ヒロインと対照的に開けっぴろげだが、それでも好きになってもらえるような、きれいな女形を目指す」と役作りに励む。
 忠村は「必死で勉強して前進座の歌舞伎の継承を第一の目標に頑張りたい」と力を込める。本番に向け「長崎に縁のある作品。古里の人にも見てほしい」と語った。公演は5月12~22日。
 問い合わせは前進座チケット専用(電0422・49・0300)。

「長崎にも縁のある作品」と話す忠村(左)と玉浦=東京・吉祥寺、劇団前進座

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