2年ぶり甲子園目指す履正社の現在地 岡田監督「大阪桐蔭との差は大きい」

春季大阪大会1回戦、履正社(右)は10-0でコールド発進【写真:沢井史】

投手中心から野手中心のチームへ、上位に並ぶ“経験者”の影響力がカギ

 22日、春季大阪大会1回戦が行われ、履正社は城東工科を10-0(8回コールド)で下した。

 今春初の公式戦を大勝で飾った履正社。前チームからの経験者が多く残り、何よりセンバツ2連覇を果たした大阪桐蔭の好敵手として注目を浴びる。昨秋の近畿大会では、初戦で今春センバツ準優勝の智弁和歌山に8?12と打ち負けた。智弁和歌山より3本多い17安打を放ちながら終盤に圧倒され、2年連続のセンバツ出場は潰えた。準優勝旗を1人で返還した濱内太陽主将は「1年ぶりに戻ってきて、開会式で行進して甲子園はあらためて素晴らしい場所だと思いました」と、甲子園出場に決意をにじませる。

 快勝スタートを切ったものの、岡田龍生監督は辛口だ。

「大阪桐蔭との実力差は大きいと思います。それでも、夏までに少しずつその差を埋めていければとは思いますが……。経験者がいるとはいえ、もっとやってくれないとね。伸び悩んでいる選手もいますし、一昨年の安田(=尚憲・現千葉ロッテ)のようにブレイクを望んでいた選手も、なかなか結果が出せていないですし。まだまだです」

 履正社はここ近年、好投手が中心となり、そこに打線の力強さが加わり勝ち上がってきた。一昨年はエース左腕の寺島成輝(現東京ヤクルト)が強力打線を従えて、春の大阪、近畿を制すると、そのまま夏の大阪大会制覇に繋げた。夏の甲子園2回戦では、優勝候補だった横浜(神奈川)を激戦の末に下したことは記憶に新しい。

 その年に4番を打っていた安田は、ちょうど2年前のこの時期にホームランを量産し、2年生ながら桁外れのパワーと飛距離を見せ、注目を集め始めていた。同じく2年生でベンチ入りした竹田祐(現明大)は、エース番号を背負ってからメキメキと頭角を現し、最速145キロ(当時)の剛球を武器とするエース右腕に成長。前チームの明治神宮大会優勝、そして昨春センバツ準優勝の立役者になっている。

 現チームは、結成時から投手が課題だった。寺島は1年生からマウンドに立ってきた経験値があり、竹田も公式戦こそ登板は少なかったが、練習試合で登板を重ね、実戦勘を養っていた。現チームのエース位田(いんでん)僚介は前チームからベンチには入っていたが、1年時は公式戦での登板はない。昨秋から本格的にマウンドに立ち、球威ではなくキレで勝負する右腕。だが、ひと冬越えて体が大きくなり、この日の先発マウンドでは直球に力が増したようにも見えた。7回を投げ5安打無失点と上々だったが、「もっと低めに丁寧に投げないと。自分の持ち味を生かす“勘”がまだまだ備わっていない」と、指揮官は手厳しい。

主将・濱内の力強い言葉「部員74人全員でまたあの舞台に行くんだ」

 だからこそ期待されるのは、前チームから経験豊富な野手陣だ。不動の1番を務める筒井太成は、一昨夏の甲子園には1年生で唯一ベンチ入りを果たしている。類いまれな打撃センスは折り紙つきで、この日放った2本の二塁打はいずれも逆方向。「この冬は常に逆方向を意識してバットを振ってきた」と自信をのぞかせた。

 2番の西山虎太郎も打撃センスは負けていない。前チームでは1番打者も経験。当時の大阪桐蔭のエース徳山壮磨(現早大)や、昨秋には智弁和歌山のエース平田龍輝から長打を放つなど、好投手にめっぽう強い。昨春のセンバツでも5試合で打率.429と結果を残している。

 3番で主将の濱内も、昨春のセンバツでは打率5割。この日も3ランを含む6打点と気を吐いた。「濱内のバッティングはチームとして手本にしていかないといけない。シンプルに打てていて無駄な動きがない」と、辛口の指揮官も絶賛。チームメイトの西山も「今年に入ってからの練習試合では、濱内は常に2本以上ヒットを打っている」と一目置く存在となっている。彼ら大舞台の経験を持つ上位打線が攻撃に勢いをつけられるか、そして下位打線にどう繋げられるかも、大きなカギとなる。

 チームの練習などがあり、今春のセンバツ中継はほとんど見ていなかったという履正社ナイン。それでも2連覇を果たした大阪桐蔭の快挙は、当然耳に入ってくる。大阪桐蔭の試合はすべて録画したという筒井が「根尾(昂)君はストレートよりも変化球の精度が上がっていました。さすがです」と言えば、西山も「(根尾の)あのスライダーは絶対に打てないと思いました」と絶賛。だが、根尾や藤原恭大らと同じように、下級生の時からチームを引っ張ってきた者として、当然1歩も引き下がるつもりはない。

「自分たちも負けない練習はしてきたつもりです。この夏に甲子園に行かないと、1、2年生は甲子園の雰囲気を知らないまま、来年を迎えてしまう。今日は結果的に大差になりましたが、これからは接戦になった時にどんな展開に持ち込めるかも大事。部員74人全員でまたあの舞台に行くんだという気持ちで、これからも練習に打ち込みたいです」

 そう言った主将・濱内の言葉が、とても力強く響いた。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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