「北朝鮮が非核化に同意!」信じられないトランプ氏のツイート

By 太田清

トランプ大統領のツイート

 トランプ米大統領は22日、「北朝鮮は非核化に同意した!」とツイートした。事実とすれば大ニュースで、米朝首脳会談も開催される前に北朝鮮側が信じられないような大幅譲歩をしたことになるが、多くの米メディアは大統領が「間違ってツイートした」と報じた。しかし、超大国のトップである米大統領が、北朝鮮の非核化という米国にとっても周辺国にとっても極めて重要な問題で間違えるなんて・・・・ 

 北朝鮮は20日、朝鮮労働党の中央委員会総会で核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を中止、「北部の核実験場を廃棄する」と決定したが、あくまで核開発凍結の意思を示しただけで、既に開発した核兵器の廃棄を含め非核化については何も触れていない。トランプ大統領は核開発凍結と非核化をごっちゃにして、ツイートした可能性がある。 

 トランプ大統領はツイートで「フェイクニュースのNBCテレビの眠そうな目をしたチャック・トッドが、われわれが北朝鮮との交渉で、あまりにも多くを譲歩したと語ったが、われわれは何も譲歩していない。北朝鮮は非核化(世界にとって本当にすごいことだ)、核実験場の閉鎖、核実験の凍結に同意した!」と強調した。 

 CNNテレビによると、日曜(22日)朝に放送されたNBCのニュース番組で、ホストのトッド氏が、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長がほとんど何も譲歩していないのに、大きな譲歩をしたように見せているなどと語ったことに、我慢ならなくなり、ツイートで反論したとみられる。トランプ氏は続けて「北朝鮮問題で結論を出すには、まだ長い道のりが待っている。時間がたてばわかる。だが、私が今やっている仕事は、ずっと前に(過去の政権が)やるべきことだった」と、いつもの民主党政権への批判に舞い戻った。 

 文脈から見て可能性は低いが、よしんば「非核化」が「朝鮮半島の非核化」を指しているとすれば、北朝鮮側が自らの核廃棄の条件として在韓米軍撤退や日韓に対する米国の核の傘撤廃などを出してくることが想定される。米国や同盟国として受け入れられない条件であり、「!」だとか「世界にとってすごいこと」などとよろこべるような話では決してなく、もしこれで米大統領が歓喜していたとすれば、逆に単に間違えたことよりたちが悪い。

 米メディアでは金正恩政権の「核開発凍結宣言」にも懐疑的な見方が主流だ。まず、北朝鮮が過去にも同様の約束を繰り返しながら全く実行されず、核開発を続けてきたこと。また北東部豊渓里の核実験場は既に老朽化しており、廃棄の方針は以前から決まっていたとみられること。さらに、6回の核実験で一定の技術を得ており、パキスタンやインドと同様に、これ以上、核実験を行う必要性がない段階に達した可能性があること―などを挙げ、米政権に楽観的な見方をやめるよう求めている。 (共同通信=太田清)

© 一般社団法人共同通信社