『君の名前で僕を呼んで』 大好きな人ができた時のときめきを思い出す

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 今年のアカデミー賞で脚色賞を受賞した本作は、17歳の少年が経験するひと夏の恋を、切なく、美しく描いた作品です。舞台になるのは、1983年の北イタリア。主人公の少年・エリオは、ハンサムで自信家の年上の大学院生オリヴァーと出会う。夏の思い出を作っていくうちに、エリオの中に芽生えるのは、オリヴァーに対するほのかな恋心。そして初めて知る、心の痛み。

 オリヴァーを演じるアーミー・ハマーはとにかく美しくて魅力的。うっとりするような肉体と表情を、監督のルカ・グァダニーノも彼に恋しているんじゃないかと思ってしまうほど魅力的に撮っています。彼のミステリアスな魅力にドキドキしながら映画が進むにつれて、観客もエリオと同じ気持ちで恋していくことでしょう。

 初めての恋って、胸がドキドキして、毎日の風景がきらめいてなんだか違って見える。エリオとオリヴァーの恋を観ていると、忘れかけていた純粋な恋心を思い出します。同性愛を描いた映画というと、観るのを躊躇する方がたまにいますが、一度そんな先入観は忘れて、ラブストーリーとして観に行って欲しい。だって初恋って、男性も女性もみんなが経験しているから。主人公はもちろんですが、彼の両親もとっても絶妙な距離で思春期の息子の初恋を見守りながら、すごく的確なアドバイスをしていて、思春期の息子を持つ親としてもすっごく勉強になりました。「恋」を繊細に描いた本作は、性別を超えてきっと誰もが共感できるはずです。★★★★★(森田真帆)

監督:ルカ・グァダニーノ

出演:ティモシー・シャラメ、アーミー・ハマー

4月27日(金)から全国公開

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