長崎県立大 県内出身の志願者増 学部学科制再編3年 佐世保校、大学の特色 高校生に浸透

 長崎県立大が2016年に3学部7学科制を5学部9学科制に再編をして3年目に入った。開学当時からあった経済学部をなくし、経営学部と地域創造学部を新設した佐世保校(佐世保市川下町)では今年、全学科で県内出身の志願者が増えた。背景の一つには、再編をきっかけに地元の高校生に大学の特色が浸透し始めている現状がある。
 「農業の補助を手厚くすればやりたい人が移住してくるかも」「図書館の再建は不要」
 20日午前11時ごろ。自治体の総務部長や福祉部長になりきった学生が税収減の対応策について議論を始めた。現役の行政職員が講師を務める地域創造学部3年の授業。公共機関でのインターンシップに取り組む前の準備講座も兼ねる。
 「相手を納得させることがいかに重要か、実感した」。佐世保市出身で同学部公共政策学科3年の中倉秀策さん(20)は感想を述べた。中学生のころから市役所職員を志望。「地元のことを学べる」と同学科を選んだ。「実務経験がある先生から面接のポイントなどアドバイスがもらえる。とてもありがたい」と満足そうに話した。
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 受験生の総数が多い長崎市に近く、国家試験の取得を目指す学部もあるシーボルト校は、毎年の志願者の約7割が県内出身。一方で佐世保校は例年県外出身者が約7割を占めていた。
 再編に伴い、佐世保校には経営の専門技能や高い語学力の習得を目指す経営学部と、公共機関や地元企業で活躍できる人材を育てる地域創造学部を新設。今年は▽経営188人(前年比36人増)▽国際経営88人(同40人増)▽公共政策200人(同9人増)▽実践経済197人(同27人増)と全学科で県内からの志願が増えた。
 「どんな学問をするのか明確になった」。県立佐世保北高で長年進路指導に携わる柏田伸司教頭はこう指摘する。同校では再編後、特に地元就職や県内の課題に関心がある生徒が早期から佐世保校を志望し始めた。「(経済系の学部は就職の際に)『つぶしが利くから』と選ぶのでなく、目標や問題意識を持って希望している」
 大学側も高校訪問の機会を増やしPRを強化。昨年は離島で初めてオープンキャンパスを開いた。学生支援課学生グループの福野健二グループリーダーは「昨年はインターンシップなどの試行ができ、高校の先生の疑問に具体的に答えられるようになった」と手応えを示す。
 一方で「志願者数の伸びに比べ入学者数の増加が低い学科もある」と分析。「親世代のイメージの影響も強い。保護者も含めカリキュラムの独自性を伝えたい」とした。

インターンシップに向け、議論をしながら行政の仕事を学ぶ学生ら=佐世保市、県立大佐世保校

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