価格高止まり、金の密輸摘発が急増 横浜税関、取り締まり強化

 全国の空港や港で密輸を企てようとした金地金の摘発が急増している。財務省によると、2017年に全国の税関で押収された金地金は6236キロで、前年に比べて2.2倍と大幅に増加して過去最高を記録した。国内屈指のクルーズ港・横浜港を抱える横浜税関は水際での取り締まりを強化するが、大型客船の同時着岸を控えて検査を担う職員の適正配置や金属探知機の確保に奔走している。

 金地金を国内で売却する際には消費税を上乗せした価格で買い取られる。そのため、消費税のかからない海外で購入した金を国内で売却して差額をもうけようと、密輸を試みて摘発される事例が増えている。

 密輸の摘発が絶えない背景として、国内の金買い取り業者での換金が比較的簡単にできることや、金地金の国際価格が高止まりしていることも要因とされる。この数年で訪日外国人旅行者や海外からの貨物が急増する一方、迅速で円滑な通関を行う必要に迫られており、金密輸の阻止に向けた抜本的な対策が急務となってきた。

 「金地金の密輸入を税関が摘発しているのは氷山の一角。相当程度の利益が国内外の犯罪組織に流れている恐れがある」。横浜税関の担当者は苦しい胸の内を打ち明ける。

 金の密輸を企てる者にとって日本の罰則が海外に比べて軽いとされたことから、財務省は4月から、金の密輸に科せられる罰金を見直した。従来は上限500万円だったが、1千万円または貨物の価格の5倍に引き上げた。例えば1億円の金を密輸した場合、最大5億円の罰金を科せられることになる。

 密輸の手口は巧妙化し、舞台は空港だけでなくクルーズ港にも広がっている。沖縄では外国客船で金地金計約27キロ(約1億2400万円相当)を密輸したとして中国人船員ら男女4人が起訴されるなど、全国の税関が水際で警戒を続ける。

 横浜税関では、ゴールデンウイークを含む23日から5月10日まで、金地金の密輸取り締まり強化期間を設定した。最大のヤマ場は、横浜港大さん橋国際客船ターミナルと山下ふ頭、大黒ふ頭の3カ所に3隻の大型客船がそろって着岸する4月28日だ。

 この日だけで、欧米人や中国人など乗客乗員合わせて最大で計1万人が下船する。税関検査は着岸した3カ所で行うことから、税関は担当の監視部を中心に休日の職員の動員や他部署からの応援を受けることで人員を増強して配置計画を立てた。

 金の密輸は身に付けて隠すケースが多いことから、空港にあるような門型の金属探知機が有効だ。大さん橋は、横浜市が所有する2基の門型探知機を利用するが、山下と大黒では市が税関から依頼を受けたものの門型を確保できない見通しで、税関職員が手持ち式の探知機で対応することにした。最大級の警戒態勢で税関検査を行うことから、乗客らに理解と協力を呼び掛けることにしている。密輸に関する情報は、密輸ダイヤル電話(0120)461961。

密輸事件で押収された1000グラムの金地金=横浜市中区の横浜税関

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