金属行人(4月25日付)

 過日夜に海岸を眺める機会があり、沖合を照らす灯光が視界に入った。たちまち脳裏をよぎった素朴な疑問。日本にはどれくらいの灯台が立っているのだろうか▼海上保安庁の関係団体「燈光会」によると、その数およそ3200基(2016年度末時点)。このうち航路標識事業に対する理解や知識の普及を目的に、年間を通じて一般公開している「参観灯台」は15基。単純計算で全体の0・5%に満たず、実に希少な存在だ▼その対象は、北は秋田県の男鹿半島、南は沖縄県の宮古島にかけての広域にわたるが、都市部からアクセスしやすいスポットも点在する。その幾つかを訪ねてみると、どれも岩礁に白波が立ち、潮風が吹き付ける自然環境下、屈強なたたずまいが印象的だ▼鋼との縁も深い。鉄製においては1885年に神戸・和田岬で最初の1基が点灯したのに続き、新潟・佐渡島では10年後の95年から今日にかけて現役最古の姿を現す▼決して派手さはないが、海上の交通を支える傍ら、後世に歴史を伝える使命を担う。最近では先端技術に基づく防食工法を採用した灯台の存在も耳にする。間もなく始まる大型連休。参観灯台の見学も有意義な時間を過ごす選択肢の一つになろう。

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