チアドラ体験後はそのまま本物のメンバーの練習を見学させてもらった。先ほどまで記者が繰り広げていた茶番とは打って変わって、練習場に一気に緊張感が走る。
「できてない」。1曲通し終わった瞬間、内先生が冷静に一言。そこから、名指しでメンバーをばっさり切っていく。明るい音楽と笑顔が広がっていた体育館の空気が一転、静寂でどんどん重くなる。
「パワーが見えない」「気持ちだけが先走ってる」「頑張ろうという気持ちがダンスに見えない」「お客さんはパフォーマンスの足りなさに気がついてしまう」…。
二度目の通し練習で、記者の目には全員の動きがそろったように見えたキレキレのダンスにも、内先生が厳しい言葉を飛ばす。メンバーは直立不動。険しい顔で何人かはうっすらと涙を浮かべつつ、指摘に「はい!」と食らいついていた。
細かいところまで突き詰めて突き詰めて、厳しい練習を重ねることでようやく笑顔が遠くまで届く完成されたパフォーマンスになるのだ。怒られ落ち込む表情を見せたメンバーが、次の通しで曲がかかったとたん瞬時にとびきりの笑顔を作ってパフォーマンスをする姿に、胸が熱くなり私が涙をこぼしそうになってしまった。
振り付けは家で覚えてくるのが基本。通しメインの4時間超の練習を終えると、時刻は午後9時。2年ぶりにチアドラに復帰したYUIさんとYUKINOさんが練習後、念入りにマッサージしていたので話を聞いてみた。
YUIさんは「練習が終わると脚がぱんぱんで。マッサージしないと翌朝むくみすぎて、脚の外側がボコッとふくらんでるようになっちゃいます」。YUKINOさんも「脚が太くならないように、リンパを流して」。チアドラはその美しい容姿をキープするのもお仕事の一つ。ここでも毎日の地道な努力を垣間見ました。
脚が太すぎてリンパの位置を探せないものの、1曲ちょっと通しただけで既に筋肉痛がひどい私も、横で一緒にマッサージに参加した。
今季のリーダーで、ショートカットがあまりに似合いすぎているSHIMAさんは「お客さんと選手の懸け橋になれるように」と意気込みを語ってくれた。
下部組織のチアドラキッズ出身。2度の落選を経てようやくチアドラ&リーダーを勝ち取った。「ナゴヤドームが盛り上がっていると選手もパワーがもらえると思うので」とパフォーマンスへのこだわりは人一倍強い。「体力的にはきついところもあるんですけど、踊ることが好きで(チアドラに)なったので楽しい」ときっぱり。
開幕までほぼ毎日、1日最長6時間の練習が続く。華やかなパフォーマンスは地道な努力あってこそ、ということを存分に教わった。
迎えた4月3日。本拠地開幕戦。試合前、開幕に向けてメンバーが全身全霊で取り組んできた「ダンシングクイーン」が初披露された。とびきりの笑顔で見事にそろった華麗なダンス、そしてチアドラ名物の「V字ジャンプ」もさく裂。集まった約3万4千人の観客が沸き、ナゴヤドームのボルテージは早くも最高潮だった。
シーズンは10月まで続く。6年ぶりのAクラス(3位以上)を目指して熱い戦いを繰り広げる選手たちはもちろん、その戦いを盛り上げようと奮闘する彼女たちのパフォーマンスも見応えたっぷり。
ぜひ球場まで足を運んで、生で彼女たちの華々しく豪快なパフォーマンスを見てほしい。チアドラの皆さんを見習ってちょこっとだけ酒量が減った記者は、心の底からそう思う。(共同通信・名古屋運動部=門馬佐和子25歳)
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