【全文その2】ハリルホジッチ前監督の記者会見。パリのホテルで伝えられたこと

4月27日(水)、先日日本代表監督を解任されたヴァイッド・ハリルホジッチ氏が日本記者クラブで会見を行った。

今回は、この会見における全文の文字起こしをお届けする(※【その1】はこちら)。

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ヴァイッド・ハリルホジッチ(元日本代表監督)

「さあ、それで予選は通過しました。それも首位で通過したわけです。我々のいたグループはそれは大変なグループでした。

でも、皆さんの中には『いや、当たり前じゃないか。だって日本はいつも予選を通過してきたんだから』と仰る方もいるかもしれませんが、そんな楽なことではありませんでした。

守備にも攻撃にもベストでした。それも歴史に残るような試合もしたんです。

それも、こんなの初めてだったんですよね。初戦を落として予選を通過できるっていうチームは。オーストラリアに最初に勝ったんですから。全員パニクってましたよ。

特に『ハリル、若い選手を起用するじゃないか』という時の、皆さんのパニクりぶり。それにもかかわらず素晴らしい勝利を勝ち取ったんです。

そして、いろいろと疑問に思っていた人々が、『彼らで大丈夫かな?』と思っていた選手たちがそこで抜きん出た力を発揮してくれたんです。『こんなに若い選手を呼んでおいて良いのか?』と納得していない人もいました。

そしてUAE代表に日本代表がアウェイで初めて勝った。

また、もう一つの歴史的な勝利がブルガリア戦です。7-2で勝利しました。ヨーロッパのチームにそれほどまでの差をつけて勝ったことは過去になかったんです」

「本当にいろいろな意味で成功してきた3年間でした。でも、それでも皆、満足できない。私自身は満足以上のものがありました。本当に難しい時期だっただけに、私はこれだけできたことに満足しています。

やはりチーム、そしてまたチームを率いる人々(※おそらく中心選手のこと)にしても、ここ数年の間、パフォーマンスという意味ではなかなか厳しいものがありました。

だからこそ私は、今までやってきたあの選手に代わる選手は誰かいないのかなと探していたわけです。

つまり、競争の原理を採り入れました。ベテランのお尻を叩き、今まで以上に頑張ってくれるようにしました。

そういった意味では、満足しないこともいろいろとありました。でも、この3年間で成功を手にして、誰もが満足をした。

そして今度は第3ステージに入るわけでして、それがワールドカップ。私が就任したのは何と言ってもそのワールドカップがあるからこそです。

そこで海外遠征を2回行いました。世界における最高峰のチームとの試合をセットしたわけです。

昨年11月、そして今年3月の遠征です。私の頭の中では代表チームのワールドカップに向けた調整だと思っていたわけです。

特に中盤とFWにおいて、何か良い解決策がないか探していました。ワールドカップで必要なもの、つまりワールドカップでしっかりとパフォーマンスが出せるものを求めていたわけです。

今まで以上に選手がもっと幅広い力を持ってプレーできるように考えました。

ですから、結果のことはあまり頭になかったんです。世界一のチームであるブラジルに対しても良い結果を出せるとは思いませんでした。あくまで彼らと試合をすることで経験を積ませることができたと思ったわけです」

「ブラジル戦、ベルギー戦、マリ戦、そしてウクライナ戦の結果は満足のいくものではないかもしれません。

ただ、結果が満足のいくものでなかったとしても、そこからたくさんの教訓を引き出すことはできました。

例えばブラジル戦、後半に2回ゴールのシーンがあったわけです(※実際は槙野智章の1ゴールのみ)。ここ数年間の試合を見てください。ブラジルに対して2つゴールを決めたチームはありますか?

前半の20分は酷い状態でした。そこで、ハーフタイムにロッカールームでハイレベルなチームを相手にどうすればいいかという話をしたわけです。

ですから、あの試合の後は選手たちを大いに褒めました。

そして次のベルギー戦は、ほぼ完ぺきといえる試合でした。負けたとはいえ、引き分け、あるいは勝つことさえできた試合だったと思うのです。

この試合における我々の代表チームはしっかりと組織力があり、自分たちのプレーで試合を支配できたことに満足していたわけです。

サッカーという意味でベルギー遠征はそんなには良くなかったかもしれません。でも、そこでいろいろなデータや情報を引き出すことができたのです」

「それも、本当であればいつもレギュラーで出場している選手の7,8人が代表チームに入っていない状況でした。

でも、以前ほどパフォーマンスが良くない選手がいると私は見てとりました。だから、私の頭の中ではこうなったらどうすべきかということを見ていました。

11月の合宿の時には18人の選手を呼び、2回目の遠征合宿(3月)の時は選手22人プラスGK2人。ですから、選手たちを試していたわけです。

そして最後にナカジマを呼びました。皆さんにしてみれば心配だったかもしれないですが、とてもいい選手…(※ここで司会の方から「そろそろまとめを」と促される)

つまりは、これらの試合はワールドカップのための調整にあって、自分が何を求めているかということは私自身ちゃんとわかっていました。

私自身はいろいろと満足していましたし、選手に関してのいろいろな情報やデータもゲットしていました。そしてその次に来るのが、一番重要な23人の選手を選抜することです。

そこで、こういった問題が始まっていったわけです。いろいろな情報が私の耳には入ってきたものの、私は自分の仕事に専念していました。

ただ、そのときにやるべき試合、プレーになっていないと言う人もいました。

ですから、こうした合宿をしてですね、1か月調整をかけて、それでなぜこんなにも問題が出てこなくてはいけないのか。

そしてなぜ、会長にしても、西野さんにしても、『ハリル、問題があるぞ』ということを一度して言ってくれなかったのか。本当に一度として」

「何かあっても、誰も、何も言わなかった。西野さんのほうが私に何か言おうとはしてしていました。

マリ戦の後、私はパリへ行きフランス対コロンビア戦を見ました。その後、ベルギーのリエージュに戻ったのは午前4時か5時という遅い時間でした。

そしてそこで、1人の選手が話をしに来たわけです。『あまり良い状態じゃない』と。

私は『分かっています。そのことについては後で解決できます』と伝えました。

残念ながらそこでいろいろなことが起こり、会長がたくさんの選手やコーチに連絡を取りました。

ただ、私を含めジャッキー(・ボヌベイ)やシリル(・モワンヌ)、GKコーチ(エンヴェル・ルグシッチ)らには説明がありませんでした。

私や一緒にやっているコーチたちにとってそれは驚くべきことでした。

そして4月7日のことでした。会長にパリへ呼ばれ、私は何のことか分からずホテルへ出向きました。お互い『こんにちは』と挨拶を交わし、椅子に腰かけ、そして『ハリルさん、これでお別れすることになりました』と告げられました。

最初はジョークだと思ったんです。1分が経ち、『なぜかを仰っていただけますか?』と聞きました。すると、『コミュニケーション不足』だと伝えられ、怒りがさらに湧きたってきたのです。

『どの選手と?』と尋ねると、『全般的に』という返答でした」

「その部屋からは5分で出ました。私は動転し、何が起こったのか分からない中で、一緒にやってくれているコーチたちに電話しました。1人はイングランド、1人はドイツにおり、選手たちの試合を視察していたんです。

そこで伝えました。『もう家に帰りなよ。終わったからな』

皆さん、彼らの反応がどうだったかはご想像ください。

会長からそういった形で話をされたこと。そしてまた、ありとあらゆるこの3年間やってきたことに対して。

ですから、私自身、監督をしている人間に対してのリスペクトがないのではないか。一緒にやってくれていたコーチ仲間に関しても同じ思いを抱いています。

昨年12月の韓国戦の後にやはり解任を考えたというお話も聞きました。それなら私も少しは理解できます。ワールドカップよりも日韓戦のほうがいかに大事かということを分かっているからです。

だから、私から皆さんにこうしたすべてをお話をしたいと思ったわけでありまして、やはり監督というのはいろいろと難しい思いをする時がある。

私自身、一回そういった経験をしているんです。24回試合に負けた後に解任ということがありましたから。ただ、その時は会長が決めたわけではなく、大統領が決定をしたという話を聞きました。

まだまだまだまだいっぱいいっぱい言いたいことがあるので、ぜひ皆さんのほうからご質問をいただき、それにお答えする形で説明したいと思います」

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