空母信濃のカレー 乗組員の記憶頼りに再現 74年前に艦内で提供「幻の味」  横須賀市

海軍で実際に使用されていた皿で提供。上部に錨の紋章が入っている

 終戦間際の1944年、横須賀海軍工廠で完成した日本海軍の航空母艦「信濃」の艦内で作られていた幻のカレーを地元飲食店のYOKOSUKA SHELLが再現した。名称は「空母信濃のカレー」(1200円/税込)。当時のレシピなど現存する資料がないため、信濃の乗組員だった岩瀬榮氏の記憶を頼りにした。同店で予約販売している。

 国産のカレー粉が初めて製造されたのが明治後期。昭和の戦時下でもカレーは軍隊食としてテーブルに上っていたとされるが、「食糧難を反映してありあわせの野菜でつくられていた覚えがある。原型を残した肉はなくスープ状のルウをご飯と一緒にかきこむ感じ」と岩瀬氏は振り返る。「ただ、隊員の士気を上げるごちそうだったことは間違いない」と付け加えた。

 カレーの再現にあたってYOKOSUKA SHELLのオーナー、澁谷光則氏は「ラードなどの油脂はほとんど使われていなかったと想定して、カレー特有の粘度は抑え目に。日本初の国産カレー粉『蜂カレー』を使用している」と説明。ゴロッとした野菜と肉をあっさりとした味で食す素朴なカレーに仕上げた。

 旧海軍時代に使用されていた器を浦賀にある骨董屋でたまたま入手、これに盛り付けて提供する。「味を追及するならもっと美味しくできるが、あえてしない。当時の雰囲気を感じて欲しい」と澁谷さんは話している。

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