金属行人(5月1日付)

 作家、未来学者のアルビン・トフラー氏のベストセラー『第三の波』が出版されたのは1980年だそうだ。農業革命、産業革命、そして情報革命という第三の波が来る。まだインターネットも満足に普及していなかった時代、こう予見したトフラー氏は昨今のSNSやAIの興隆を見ると、まさしく慧眼の持ち主だったと思う▼鉄鋼業にはずいぶん前から情報化の波が押し寄せている。ミルシートがあり、トレーサビリティーがあり、製品およびその工程のすべてが記録され、情報として残る。製造業と情報化。この両者の相性は良かったのだろう。所有する情報量がビジネスの成否を決めるようになった時代。企業にとって今や「情報」は資産であり、その量の差は競争力の差につながる▼差異があってはならないこともある。昨今の政治問題で公文書管理の在り方が問われているが、膨大なデータを保存できるようになった今、文書のある無しの是非を論じるのは古くささを感じる。そして、私たちがそれを判断する「情報」を持っていないということも▼公文書という情報は国民全員の財産。政策がどのように決定されたか知ることができるというのは、民主主義にとって不可欠なのだから。

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