【日立金属の今年度方針】平木社長「軟磁性部材の成長加速」 副資材もサーチャージ導入へ

 日立金属の平木明敏社長は26日、都内で開催した決算記者会見で現行中期経営計画の最終18年度における新たな取り組みを説明し、「コングロマリット・プレミアムの発揮」を強調した。自社の強みを「歴史に裏付けられた多様性のある事業ポートフォリオを持ち、特殊品、環境親和製品中心の技術力が高いこと」と表現し、「新たな技術潮流に対して尖ったコングロマリットを束ねることでプレミアムを生み出す。その方向性で他社との差別化を図り、研究開発を加速する」と述べた。

 一例が〝パワーエレクトロニクスマテリアル事業〟だ。特殊鋼カンパニーでは低周波領域で電磁鋼板並みの電源変換容量を持つアモルファス金属から高周波領域に適したファインメット、メタルパウダー、ソフトフェライトなど幅広い軟磁性材料・部材をそろえ、炭化ケイ素、窒化ガリウムなどを用いる次世代パワーデバイス市場の拡大に呼応する。一方、磁性材料カンパニーは高熱伝導窒化ケイ素基板を持ち、炭化ケイ素基板の研磨も行う。

 カンパニーをまたがる製品群や技術を4月新設のパワーエレクトロニクスマテリアル事業推進室が包括的に結合し、グローバル技術革新センター(GRIT)と連携して開発を加速する。同事業の17年度売上高は360億円で両カンパニー合計売上高の9%にとどまるが、平木社長は「いずれは1千億円を実現したい」と明言した。

 各カンパニー共通の課題では「従来の合金原料サーチャージ制に加え、電極など副資材サーチャージ制の導入」で多数の顧客と協議を進めていることも明らかにした。対象範囲や基準、時期は一様ではないが、「年初に交渉を開始しており、7~9月期から導入したい」と述べた。海外で電極サーチャージ制の導入事例などはあるが、日本では珍しい。「歩留まり改善などの原価低減を行いつつ、副資材コスト変動はガラス張りにして事業の安定性を高めたい」と語った。

 カンパニー別の取り組みでは、素形材の耐熱鋳造部品(ハーキュナイト)が3月単月で黒字化を果たした。18年度はハーキュナイトが利益体質化し、生産性改善に加えて減損処理を行ったアルミホイールの赤字幅も縮小する。電線材料では従来の「鉄道・医療・電装部品」の3分野に「FA・ロボット向け機器用電線」「xEV用マグネットワイヤ」を加えた5分野を成長分野に位置づける。

 17、18年度の設備投資額は年1千億円規模だが、設備投資のピークを越え、19年度は減価償却費見合いの約700億円の見込み。配当性向目標は従来の25%から18年度30%に引き上げた。

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