WEC代表、2020年のセブリング戦スケジュール変更は“最善の妥協案”

 WEC世界耐久選手権のCEOを務めるジェラルド・ヌブーは、WECのセブリング復帰にあたってレースフォーマットを変更することは、関係者全員にとって最善の“妥協案”であり、それにより2019年以降もファンへ“素晴らしいプログラム”を提供できると考えている。

 当初の予定では、IMSAウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップの1戦であるセブリング12時間終了後、現地2019年3月17日(日)午前0時から1500マイルレースが行われる予定だった。

 しかし、WECは4月4日にスケジュールの変更を発表。レースを2019年3月15日(金)午後スタートとし、走行距離1000マイル、最大延長8時間というフォーマットへ改められた。

 ピットレーンについてもWEC用にIMSAとは異なるものが用意される予定だが、WECのチームが使用するパドックエリアはIMSAのパドックに併設される。

 ヌブーは、WECの2018/19年“スーパーシーズン”のスケジュールを確定される時間が限られていたことから、セブリングのフォーマットについて再考する必要が生まれたとしている。

「セブリングに関しては、あらゆるもののタイミングを正確に見極めなくてはならない」とヌブー。

「(昨年の)夏に“スーパーシーズン”について概要を発表したが、このシーズンを魅力的なものにするために、いつもとは異なる方法を採る必要があった」

「スポーツカーレースと耐久レースにとって伝説的な地であるセブリングを訪れるのは、特にアメリカという地では理にかなった決定だ」

「パドックの関係者からもセブリング(での開催)は強く望まれていたから、我々はACOフランス西部自動車クラブのピエール・フィヨン(会長)とともに、IMSA側とマイアミで話し合いを行った。(2017年の)WECメキシコ戦直前のことだったよ」

「同じ週末にふたつのレースを行うアイデアについて合意していたし、どちらかのレースを終えた直後に、次のレースをスタートさせるフォーマットを思い描いていた。一体となって開催することに合意していたんだ」

「その後、今年のセブリング12時間を訪れた。レースウイークの状況を把握することで、アイデアを実行できるか見定められるからね」

 その後、WECとACO、IMSA側で議論が進められフォーマット変更が必要だという意見がまとまったという。

■WECセブリングは“アメリカンイベント”に

2018年のデイトナ24時間レースに訪れたピエール・フィヨンACO会長(左)とWECのジェラルド・ヌブーCEO(中央)

「セブリングで3日間を過ごし、IMSAとセブリング・インターナショナル・レースウェイからとても温かい歓迎を受けた。我々は、IMSAのレース終了から3~4時間は経過しないと、新たに耐久レースを行えるようコースコンディションを整えるのは難しいという報告を受けた」

「スタート時間が午前2時や3時になってしまうのは、まったく正しい決定とは呼べない。そこでレースを日曜日に行うか、金曜日に行うかというオプションを検討することになったんだ」

「ピエールとジム(・フランス、NASCAR副会長)、エド(・ベネット、IMSA最高経営責任者)、スコット(・アサートン、IMSA代表)と私でミーティングを持った。我々は誰にとっても一番良い、最善の妥協案と思われる案を採用した」

 ヌブーによると、最終コーナー手前のウルマンストレートのドライバーから見て右手に専用ピットレーンを設ける案も、すぐに合意されたということだ。

 このWEC専用ピットレーン作成のため、既存のパドックスペースが縮小されることになるが、仮設ピットがIMSA参戦チームの“メインストリート”に併設される形でWEC用のパドックが設けられる。

 また、このWEC用ピットレーンではガレージとピット作業エリアが分離する“アメリカ式”のピットウォールが採用されるという。

「このWEC戦は“アメリカンイベント”になるだろう」とヌブー。

「もしマシンに大きなトラブルがあれば、修理するためにはブースまで戻らなくてはならない。ピットレーンもアメリカスタイルのものを採用する見込みだ」

 また、ヌブーによればチームだけでなく、ファンにとっても成功と認められるよう、レースコントロールやメディアセンターの位置などを変更する可能性も含めて詳細な話し合いが進められているという。

「つまるところ、一番の目標はファンを喜ばせることにあった。なぜならセブリングはイベントにふさわしい場所だからだ。この場合、ファンは木曜日の夕方に予選とフリー走行を見ることになる。コース上でイベントが行われるわけだ」

「そして金曜日にはビッグレースがあり、土曜日には再び素晴らしいプログラムがファンを待っている」

■セブリングでの長期的ビジョン

ピットガレージとレース中の作業エリアが分離するアメリカンスタイル。ピットレーンにはコンクリートウォールが設置されている。

 2019年のイベント成功を確たるものにするための投資が行われており、現在ではセブリングでの長期的ビジョンがあるとヌブーは語った。

 2017年8月に締結された当初の契約は、延長オプションを含むものの単年契約であるとみられるが、ヌブーは2020年3月にWECがセブリングに戻ってくるプランも構想していると明かした。

「アメリカでの開催を継続するのなら、セブリングにとどまることが我々の目標であることは、はっきりしている」

「このイベントを続けたいと構想している。もちろん2019年の経験から得る教訓は心に留めていく。初めての開催となるし、パドックの状況も異なっているからだ」

「一部の人々は、我々が(2019年のレースを)キャンセルするのではないかと懐疑的だった。しかし、キャンセルすることは考えたこともない。選択肢はいくつかあった。我々は誰にとっても一番良い妥協案である選択肢を選んだと思う」

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