新種アメンボ 大村湾で発見 長崎西高の生物部3人 60年ぶり快挙 和名「ナガサキアメンボ」

 長崎県立長崎西高生物部の3年生3人で構成する研究グループが新種のアメンボを大村湾で発見したとして1日、カナダの国際学術誌ホームページで発表された。アメンボの新種発見は60年ぶりの快挙。生徒らは学名「アクアリウス・ハリプロス」、和名「ナガサキアメンボ」と命名した。特殊な閉鎖性海域、大村湾の淡水が混じる汽水域で繁殖する生態的特性があり、平均体長は雄12ミリ、雌15ミリ。
 グループは、リーダーの朝鍋遥さん、生物部長の平野安樹子さん、桃坂瞳さんで、いずれも17歳。昨年6月、大村湾に生息する絶滅危惧種の海産アメンボ4種の調査を始めたところ、淡水に生息するナミアメンボにそっくりな個体が海面で群れているのを発見、採取。「海産アメンボ類は丸っこい紡錘形。なぜ淡水にいるはずの細長い種が海面で生息しているのか」と疑問を抱いた。
 顧問の長嶋哲也教諭(59)が指導し、専用の飼育装置を約2カ月かけて作り、自然に近い状態での飼育、産卵などの観察に成功。触角や交尾器の形態的特徴が淡水のナミアメンボとは異なることや、塩分濃度が0・5~2・8%と低い汽水域に適応して繁殖、頑丈な卵を汽水中に産むことなどを突き止めた。また、50回以上のフィールド調査で、大村湾南部のほぼ全域に生息することも分かった。
 重要な研究成果と認めた専門家の安永智秀アメリカ自然史博物館研究協力員(54)=長崎県長崎市在住、農学博士=が責任著者となり、生徒らと連名で論文を作成。カナダ「ザ・カナディアン・エントモロジスト」誌ホームページに掲載された。安永氏は「アメンボは研究し尽くされた感があるが、粘り強い研究が60年ぶりの新種発見という大きな成果を上げた」と話している。
 作製した標本は、海外の博物館などで展示される予定。生徒3人は飼育時の苦労などを振り返り、「自分たちの標本が世界で見てもらえることになり、うれしい」と喜んだ。

新種「ナガサキアメンボ」の論文と標本を手にする(右から)平野さん、朝鍋さん、桃坂さん=長崎市竹の久保町、県立長崎西高
ナガサキアメンボ(長崎西高生物部提供)

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