浮世絵3千点を活用 川崎市がギャラリー整備へ

 川崎市は、2016年9月に休館した「川崎・砂子の里資料館」(川崎区砂子)が所有する貴重な浮世絵コレクションを活用し、JR川崎駅前のビル内に専用ギャラリーを整備する方針を明らかにした。19年末までの開設を目指す。海外でも関心の高い江戸浮世絵文化を発信する拠点として、今後増加が見込まれる外国人観光客の誘客にも生かしたい考えだ。

 

 同館は、元参院議員の斎藤文夫さん(89)が自宅を改造して私立美術館として01年に開館した。約15年にわたって歌川広重や葛飾北斎らの浮世絵を展示。入場無料で年間7千人の来館者を集めた。

 

 運営する「公益社団法人川崎・砂子の里資料館」が所有する作品は約3千点に及ぶ。「東海道五十三次」「富嶽三十六景」などシリーズ全作品がそろった希少価値の高いものも含まれ、内外の美術館へも貸し出している。

 休館直後から貴重な所蔵作品が散逸しないよう求める声も上がっていた。市は昨年8月、同館から作品の有効活用を求める検討の依頼を受け、文化芸術振興や地域の魅力向上などの視点で検討してきた。

 

 市が4月まとめた基本方針では、交通利便性の高いJR川崎駅北口に直結する「川崎駅前タワー・リバークビル」3階に浮世絵常設ギャラリーを開設する案を提示。市が区分所有する約150平方メートルを使い、展示スペースを整備する計画だ。

 

 同館から所蔵作品の無償貸し出しを受け、壁掛けやガラスケースに55~60点を展示。入館料を徴収し、公益財団法人・川崎市文化財団が施設運営を行う枠組みを想定している。

 

 市は今後、空調や照明、内装工事を進め、浮世絵に適した展示環境を整備していく。市の試算によると、初期投資は概算で9千万円を見込む。同駅周辺は羽田空港や東京駅、品川駅からも近く、国内外から来訪者がアクセスしやすい。国内に注目が高まる20年東京五輪・パラリンピックをにらみ、ギャラリー開設を急ぐ方針だ。

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