飲酒運転事故の被害越え音楽教諭を目指す前川さん 生徒に「あきらめない心の大切さ伝えたい」 5日の定演でソロ出演も

 飲酒運転の交通事故被害に遭いながらも音楽の道を歩み続け、教諭を目指す前川希帆さん(22)=長崎県立佐世保東翔高出身=が今春、岡山県の大学を卒業。任期1年の常勤講師として、長崎県南島原市口之津町の県立口加高に先月着任した。「あきらめない心の大切さを伝えたい」と新天地で吹奏楽部を指導する日々。5日の第34回定期演奏会では、伴奏する部員に見守られながら、恩師の指揮でトランペットのソロ演奏を披露する。
 前川さんは2013年、母が運転する車で走行中、酒気帯び運転の車が起こした事故に巻き込まれ、前歯4本を失った。義歯を入れるなどして練習を続け大学入試に合格。進学後、スランプで心が折れかけた時期もあったが、高校の恩師の中村明夫教諭らに励まされた。長期休暇中に母校の部活指導を手伝ううちに、再び音楽を純粋に楽しめるようになり「私も一から音楽をつくる喜びを生徒と共有したい」と教員を志した。
 昨夏の教員採用試験は不合格だったが、講師として音楽の授業をしたり、部活の指導をしたりしながら、7月に再挑戦する。前川さんは「初めて受け持つ生徒。演奏会の数を増やすなど私にできることは全部、全力でしてあげたい」と意気込む。口加高3年の中村珠沙希さん(17)は「年齢が近く、指導も休憩中も明るく接してくれる」、下田奈緒さん(17)も「事故を克服してきたエピソードを初めて聞いて衝撃だった。私も頑張ろうと刺激を受けた」と話す。
 当日は南島原市有家町のありえコレジヨホールで午後1時からテレビの特集映像を流した後“師弟競演〟。同2時から定演が開演する。

音楽の道をあきらめず4月に着任し、吹奏楽部を指導する前川さん
5日の本番に向け練習に熱が入る前川さん(左)と生徒たち=口加高

© 株式会社長崎新聞社