9条の「危機」彫刻に 海老名の作家が新作

 憲法改正を巡る動きが取り沙汰される中、神奈川県海老名市を拠点に活動する彫刻家中垣克久さん(74)=現代造形表現作家フォーラム共同代表=が、憲法9条をテーマにした新作を完成させた。安倍晋三首相や自民党は「自衛隊を憲法に明記する改憲」を掲げており、9条をはじめ憲法そのものの変容を危惧する思いを作品に込めた。

 作品は「時代(とき)の肖像-磔刑-」。9条の条文を記した布を、高さ約3メートルの十字架に張り付けた。十字架は血潮を模した赤色に染まっており、中垣さんは「憲法改正に意欲的な現政権の前で、風前のともしびとなっている9条の危機的な現状を表した」と語る。

 安倍首相が提案する9条の改正案は、戦争放棄を定めた1項、戦力不保持を記した2項を維持するとしているが、中垣さんは静かに首を振る。「自衛隊が明記されることで(2項などとの)矛盾が出てくる。そしてまた、今度はその矛盾を軸に改憲となる。平和憲法は後退してしまう」

 作品を通して強い警鐘を鳴らす一方、次代への願いも込めた。作中に取り入れた9条条文の漢字にはルビを振った。「子どもたちに条文を読んでもらいたいと思った。戦後、戦争が一つもなかったのは誇れることだよとも伝えたかった」

 作品は、3日に東京都美術館(台東区)のギャラリーで始まった同フォーラムの展覧会で10日まで展示される。問い合わせは、同美術館電話03(3823)6921。

憲法9条をテーマとした新作を完成させた中垣さん=海老名市内のアトリエ

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