再生エネ外交を提言 「河野カラー」に波紋も

 地球温暖化対策を日本外交の主軸に-。外務省の有識者会合が3日までに、こんな提言をまとめた。再生可能エネルギーによる発展途上国支援や、脱炭素社会の枠組み作りの主導などが盛り込まれ、環境分野に関心の高い河野太郎外相(衆院15区)の「カラー」がにじむ内容だ。政府のエネルギー政策よりも踏み込んだ提言に一部で波紋が広がる中、実現に向けた取り組みに注目が集まる。

 「外交の責任者として、しっかりと受け止めたい」。4月19日、外務省で有識者のメンバーと向き合った河野氏は、満足そうに提言を受け取った。

 有識者会合は1月、研究者や経営者ら9人をメンバーに、河野氏の肝いりで発足した。2月に最初の提言として、化石燃料確保を中心とした従来のエネルギー外交から、温暖化対策で世界を先導する外交への転換を提案。4月に最終の提言がまとめられ、再生エネの技術を生かした途上国支援や、温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」を念頭とした施策強化を求めた。

 ただ、燃料費は安い一方で二酸化炭素(CO2)排出量が多く、国内でも評価が分かれる石炭火力発電を「廃止」とするなど、踏み込んだ内容は波紋を呼ぶ。「政府のエネルギー政策を否定するような提言。慎重な取り扱いが必要だ」。2月の提言後、国会で電力業界出身の野党議員からくぎを刺されると、外務省は「(省の見解ではなく)あくまで有識者の考え方」と釈明に追われた。政府内でも世耕弘成経済産業相が「論評は差し控える」と距離を置くなど、受け止めには温度差がある状況だ。

 提言は今後、どう生かされるのか。河野氏は「日本の外交の中に盛り込みたい」と話すが、外務省関係者は「これから検討する」と述べるにとどめる。

 一方で期待を寄せる声もある。河野氏と超党派で「原発ゼロ」推進に取り組んできた立憲民主党の阿部知子氏(衆院12区)は、有識者会合を立ち上げた試みを「閣内で自由に発言できない中、再生エネに力を入れたい思いが伏線となっているのでは」と河野氏の狙いを推し量り、こう話す。

 「気候変動は干ばつや飢餓など世界の紛争の根源となっており、外交上も重要なテーマ。提言の実現に向け、気候変動対策を外交のツールとして考えられる人材を育成するなど、省内の体制を確立させてほしい」

◆「地産地消」も取り入れ

 小田原の企業参加

 有識者会合には、徹底した省エネ設備を導入している「鈴廣かまぼこ」(小田原市)の鈴木悌介代表取締役も参加。同社が実践するエネルギーの「地産地消」は「地域分散型エネルギーモデルで世界に貢献する」などと提言にも取り入れられた。

 鈴木氏は提言を「事務局の案もなく、データに基づき、メンバーでゼロから議論した成果」と強調。「世界の潮流や日本の立場を一番敏感に知る外務省が、エネルギー政策に言及するのはもっともなこと。外務省の今後の施策を見守りたいし、提言した私たちも市民レベルに取り組みを広げていきたい」と話している。

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