GT300決勝《あと読み》:GT300上位陣の“要因”と悔しい結果となったBRZのトラブルと“収穫”

 500kmというレース距離。2回義務づけのピットストップ。タイヤコンペティションがあり、さまざまな車種が集うGT300では、今回のスーパーGT第2戦富士でもかなり見どころのあるレース展開となった。表彰台に立ったマシンを中心に、それぞれの上位進出の“要因”をまとめてみよう。

 まず結論から言ってしまうと、どうやら今回のレースではタイヤが勝敗を大きく左右したのは間違いないだろう。トップ10のタイヤを見ると、ブリヂストンがワン・ツー、ダンロップ、ブリヂストンと続き、ヨコハマ勢が5~9位に。10位はダンロップ……という結果だ。

 今回のレースは晴天に恵まれたものの非常に風が強く、レース後半に向けてどんどん気温が下がっていった。そこにピタリとハマったのが、ブリヂストン、そして特にダンロップというわけだ。

 優勝したARTA BMW M6 GT3はブリヂストンで、何より車両特性が富士にはピタリとハマっている。今回最多勝記録を更新した高木真一も、「次の鈴鹿は僕たちのマシンがいちばん苦手とする場所」というとおり、BMW M6 GT3は得意、不得意が割とくっきりしている。

■追い上げをみせたTOYOTA PRIUS apr GTとGAINER TANAX GT-R

 また、2位に入った31号車TOYOTA PRIUS apr GTは「第2スティントから第3スティントへの交代のときに、タイヤ無交換作戦を採ったのが大きい」と金曽裕人監督は語る。

「ペースは悪くなかったけれど、ドライバーがそれぞれ仕事をキッチリ仕事をしてくれた。ブリヂストンさんから『チャレンジしましょう』と無交換を提案してくれたんです。そのアドバンテージが大きかった。それに無交換は、最後が(平手)晃平がだったからできた」

31号車TOYOTA PRIUS apr GT

 その平手は、さすがはGT500経験者にして、ブリヂストンを良く知るだけの実力を発揮している。「嵯峨(宏紀)選手がコントロールしてくれたからできた作戦でしたね。最後はGAINER TANAX GT-Rが速いペースで追いかけてきていたから、うしろとのギャップを考えながら走っていました。けっこうキツかったですね」という。

「移籍してきて2戦目でちゃんと走って、実力で2位を獲れた。GT3に分があるサーキットで表彰台を獲れたので、いい流れですね」

 そのGAINER TANAX GT-Rだが、レース中盤から素晴らしいペースで追い上げ、3位表彰台を獲得。2018年モデルのニッサンGT-RニスモGT3に、GT300での初表彰台をもたらした。この要因について福田洋介エンジニアに聞くと、「タイヤがピッタリ当たりました。本来は“保険”でもってきていたタイヤでしたが、それが当たったかたちですね」

 GAINER TANAX GT-Rのスタート時のタイヤは、当然予選で使用したタイヤのうちの1セットだが、1スティントめのタイヤがいまひとつだった上に、序盤CARGUY ADA NSX GT3とヒット。そこから替えたタイヤで猛烈な追い上げをみせたというわけだ。CARGUYとの接触がなければ、さらに上に来ていたかもしれない。ただ、予選で使った2セットのうち、もう片方のものが抽選で選ばれていた場合、「第1スティントで10周ちょっとでダメになっていたと思う。そこは運が良かった(笑)」というから面白い。

 これらの上位陣のコメントからも分かるとおり、今回は公式練習でロングランができていなかったこともあり、持ってきたタイヤが「当たった」か、「外れた」かが大きかったようだ。ヨコハマ勢は大苦戦……というわけではなかったのかもしれないが、他メーカーほど「当てる」ことができなかったということだろう。

■無念のトラブルに見舞われたBRZ

 そしてブリヂストン、ダンロップ勢のうち、なんとも悔しい結果となったのが2番手を走ってたSUBARU BRZ R&D SPORTだ。今回のレースを振り返るにあたり、ふれないわけにいかないだろう。BRZは今季の目標としていたストレートスピードの向上が功を奏し、決勝でも高い戦闘力を発揮していた。

 ドライブしていた山内英輝、そして渋谷真総監督によれば、BRZはスタートを務めた井口卓人から山内に交代した後から、エンジン音に変調をきたしていたという。ただ、タイムには影響はなく山内は走行を続けたが、パワーを失いマシンを止めることになってしまった。原因はまだ調査中だが、「オイルが外に出ていることは分かりましたが、なぜそうなったのかはまだ分かりません」という。

 これまでBRZは富士を最も苦手にしていたが、「タイムを見ても表彰台は狙えていただけに残念」という渋谷総監督。また、山内も「コースに復帰した後、プリウスを引き離すことができていましたし、プリウスが無交換できても表彰台はいけた。それだけに悔しいですね……」と語った。

 BRZは今季、得意のコーナリングを活かしながら、ストレートスピードを狙うべくロードラッグのエアロを装着。エンジンも「乾いたタオルを絞るように(渋谷総監督)」パワーを絞り出していた。ただ、今季BRZはトラブルがテストからかなり多い。これさえ解決すれば、数多くのファンを喜ばせることができるのだが。その質問を渋谷総監督にぶつけると、「恥ずかしながらおっしゃるとおり」という。

「当然やっている方も壊れていいと思ってやっているわけではない。このEJ20エンジンはWRC参戦時代から使っているものですが、重箱の隅を突くように開発しています。ただ、まだやれるとやってきた結果、トラブルが出ているのもあるかもしれない」

「今回の予選結果からも、ファンの皆さんもすごく喜んでくれた」という渋谷総監督。次戦はBRZが得意とする鈴鹿だ。今回の富士で得た悔しさと収穫を、ぜひぶつけて欲しいところだ。

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